本研究代表者は、複雑に官能基化された海洋天然物(ポエシラストリン)の立体配置を含む完全な構造決定を目標に、天然物の基本骨格を分解し分子中の不斉炭素の個数を減らしたフラグメントを得るための反応検討をおこなってきた。前年度までに、ポエシラストリンの分子中に3箇所含まれるアミドと水酸基が隣接する部分構造(N-アシル-β-アミノアルコール)を官能基の脱離や異性化を抑えつつ脱アシル化し、天然物のマクロ環と側鎖が切り離されたフラグメントをLC-MSで検出することに成功している。しかしながら天然物が稀少なため、当該フラグメントのNMRによる構造解析は現時点では難しいと判断された。次に立体配置が確定した化学合成品と天然物をLC-MSにおいて直接比較することを計画したが、構造の候補となる全立体異性体を網羅的に合成するためには、当該フラグメントに含まれる立体配置が未決定の不斉炭素の数をさらに減らすことが求められた。そこで別途誘導体化をおこない、当該フラグメントと炭素骨格が共通する分子サイズのより小さなフラグメントを調製した。LC-MSにおいて合成品と保持時間の比較をおこない、新たに複数箇所の絶対配置を決定することができた。
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