研究課題/領域番号 |
19K15716
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
阿部 光 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (10462269)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | がん-間質相互作用 / 構造活性相関 / がん細胞増殖阻害活性 / 類縁体合成 / キノロン / ミトコンドリア呼吸鎖関連楮 / complex I |
研究実績の概要 |
近年がん細胞の増殖、悪性化、転移にはがん組織周辺に混在する正常細胞由来の間質とのシグナル伝達(がん-間質相互作用)も重要因子であると認識され、新たな抗がん剤探索研究の対象として注目されている。本申請課題で扱うインターベノリン(以下ITV)関連化合物は、間質の一つである線維芽細胞(間質細胞)内のミトコンドリア呼吸鎖関連酵素の一であるcomplexIに作用し、がん細胞周辺の微小環境制御を介した新しい作用機序によってがん細胞の増殖を阻害する。さらにマウスxenograftモデルで顕著なin vivo抗腫瘍活性を示したことから、ITV関連化合物に関する構造最適化および構造活性相関研究を展開し、社会的要請度の高い医薬品の一つである抗がん剤の提示を本研究における最終目的とした。 本年度はこれまで得られたITV関連化合物のSAR上の知見に加えて、代謝安定性試験より得られた代謝産物の構造情報も加味した新規類縁体合成を行った。 リードであるITVはシトクロムP450によって容易に代謝を受けていることが問題視されてきたことを受け、代謝安定性の向上ががITVの潜在的に潜むin vivo抗腫瘍活性を存分に発揮できる最適案と考えた。まず代謝を受けやすい構造箇所を検証したところ、キノロン核2位上のゲラニル側鎖内部に位置する二重結合の酸化が明らかとなった。そこで当該部位に関し、代謝阻害、抑制を目的とした構造変換を施した結果、リードであるITVよりも良好な代謝安定性を示す類縁体の獲得に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代謝安定性の向上が認められた新規類縁体のがん細胞増殖阻害活性は、リードであるITVよりも強力で、マウス急性毒性試験からは重篤な毒性は観察されていない。現在マウスxenograftモデルにおける本新規類縁体のin vivo抗腫瘍活性試験を実施中であり、当初研究計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは胃がんおよび大腸がんを対象としてきたが、間質細胞に作用することでがん細胞の増殖を阻害するITV関連化合物は、がん細胞を豊富な間質が取り巻いている膵がんに対しても効果を示すことが期待できることから、膵がんも今後検査対象に加える。そこでMIAPaCa-2をはじめ、BxPC-3、Panc-1およびCapan-1等、数種の膵がん細胞に対するがん細胞増殖阻害活性をヒト膵臓間質細胞共存下(共培養)および非共存下(単独培養)でも評価する。その後はマウス急性毒性および代謝安定性試験を同時に調査する。良好な生物活性および代謝安定性を示した化合物に関しては、complex I阻害活性を測定し、当該活性が認められた類縁体の大量合成を行い、胃がん、大腸がんおよび膵がんマウスxenograftモデルによるin vivo抗腫瘍活性試験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は国内新型コロナウイルス感染症蔓延による緊急事態宣言発令により、在宅勤務時間が増え、実質実験に充てる時間が短縮されたことから当初予定していた金額よりも大幅に使用金額が少なくなった。最終年度は高額なマウスを用いた実験が主となることから、繰り越し分をマウス購入費に充てる予定である。
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備考 |
https://www.bikaken.or.jp/
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