研究課題/領域番号 |
19K15718
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
金 水縁 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (50758886)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | タンパク質分析 / ゲル電気泳動法 / 単一分子蛍光顕微鏡 |
研究実績の概要 |
タンパク質は、体の構成成分から、遺伝物質を折り畳むヒストン、酵素、抗体まで、様々な生命現象に最も直接的に働く生体分子である。このようなタンパク質を組織や細胞から分離および精製し、その組成と活性を検討する分析技術は、生物・医学分野の歴史的発展に欠かせない役割を果たしてきた。特に、電気泳動法は、電荷性物質が外部電場により一定の電極に向いて動く現象を利用し、タンパク質を分子量又は等電点ごとに分離する最も一般的な分析法である。 一方、電気泳動法で分離されたタンパク質を視覚化するためには、Coomassie色素や銀粒子などによる染色が必要であり、その検出限界は一つのバンドあたり数百ピコグラムである。したがって、サンプルの量が少ないと、発現量が小さいタンパク質はほとんど検出不可能である。 我々は1次元電気泳動により分離した様々な種類のタンパク質を、単一分子蛍光顕微鏡により1分子感度でそれぞれ計数化する「単一分子蛍光ゲル電気泳動法」を確立した。この手法を使用すれば、既存の検出限界を数百万倍向上することが可能になる。さらに、1細胞ハンドリング装置を利用し、少数個の細胞試料に含有されたタンパク質を高効率で蛍光標識するプロトコルを開発した。その結果、電気泳動後のポリアクリルアミドゲルを単一分子蛍光顕微鏡で観察し、ゲル内の各位置に存在する標識タンパク質の個数を1分子感度で調べることに成功した。得られた結果の信憑性と再現性についての検討も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一分子計測とゲル電気泳動による単一分子蛍光ゲル電気泳動法をほぼ完成しており、さらに、次年度に予定していた一細胞実験および二次元電気泳動の最適化まで既に進めている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度の研究結果に基づき以下の研究を予定している。 (1)ヒト培養細胞の1細胞プロテオーム解析を実施する。まず、数十個の細胞試料のプロテオームを解析し、各細胞間での非均一性と各種タンパク質間の共発現性について調べる。 (2)酵素タンパク質の活性度を調べるActivity-Based Protein Profiling(ABPP)法とタンパク質リン酸基を選択的に標識するPhos-tag試薬を参考にし、Multiplex 単一分子蛍光ゲル電気泳動法を開発する。 (3)二次元電気泳動装置を使用し、1細胞で解析できるタンパク質の種類の数の向上と、2次元画像解析による安定したプロテオーム解析法の開発を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究を進めていくために、必要に応じ研究費を執行した。そこで、一部の研究計画は次年度に行うことになり、必要な装置および消耗品等は次年度に執行する。一方、予定されていた出張が複数延期され、その分の旅費は次年度に使用する予定である。
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