本研究は、血中因子や神経伝達物質に応答しMRI信号を増感する磁性ナノプローブを開発し、高感度全脳機能イメージング技術を確立することを目的とする。これまでに、ドーパミン・セロトニンなどのモノアミン系神経伝達物質に応答し、T2強調画像コントラストが変化するMRIプローブの開発に成功している。 本年度は、上記と同様の原理に基づき、グルコースを検出するMRIプローブの開発に取り組んだ。本プローブは、グルコース誘導体が結合した磁性ナノ粒子と、グルコース結合レクチンから構成される。用いたレクチンは多量体を形成するため、磁性ナノ粒子を架橋しT2緩和を促進する一方、グルコース存在下では架橋が解消しT2延長が起こると考えた。 そこでまず、均一かつ小さな粒子径を有する磁性ナノ粒子の合成にとりかかった。磁性ナノ粒子の粒子径が小さいほど、多数のグルコース誘導体を結合できるため、反応速度を向上できると目論んだ。熱分解法によって粒子を合成した所、粒子径が約15 nmの極めて単分散な粒子が得られた。脂質で粒子表面を機能化した後、グルコース誘導体を結合した。合成した粒子とレクチンを混合すると、数分以内で数百nmの凝集が観察され、T2の大幅な短縮が見られた。凝集体の粒子径は、グルコース濃度の上昇に伴い減少し、T2が延長する挙動が見られた。T2は血中グルコースの濃度範囲で大きく変動し、10 mMグルコースを6分以内で検出可能であった。以上から、本プローブを用いることで、血中グルコースを迅速に検出できることが示唆された。
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