R5年度は,コロナ禍等により中断となっていた培養実験およびその培養した土壌試料の解析を再開,実施した. C-13標識有機物を添加・培養し,プライミング効果の発現が確認された表層土と下層の埋没腐植土を用いて,培養期間中の土壌細菌叢の変化について16S rRNA遺伝子のアンプリコンシーケンス解析により調べた.また,プライミング効果の発現と土壌細菌叢との関係について調べ,プライミング効果の発現に関わる微生物群を検討した. 表層土および下層の埋没腐植土では,培養前の細菌叢が異なる様子が見られた.表層土では,Proteobacteria門の相対存在比が最も高かったのに対し,下層の埋没腐植土ではProteobacteria門よりもFirmicutes門やChloroflexi門など表層土とは異なる門の相対存在比が高いことがわかった.また,表層土と埋没腐植土の両方において,培養期間中,微生物バイオマス量の増加と相対存在比の増加のタイミングが同期する微生物群が複数存在することがわかった.このことから,これらの微生物群がプライミング効果の発現を担っている可能性が高いこと,表層土と埋没腐植土では発現を担う微生物群が異なる可能性が考えられた.さらに,同じ深さの土壌においても,添加する有機物の基質濃度によって,相対存在比が増加する微生物群が異なることがわかった.これらの結果から,火山灰土壌におけるプライミング効果は,その深さと供給される新鮮有機物の量によって,異なる微生物群によって引き起こされている可能性が示唆された. これらの成果は,R6年度日本生態学会等において発表予定である.
|