イネのアルミニウム耐性に関与する転写因子ART1のタンパク質制御機構を明らかにするために、酵母のツーハイブリットスクリーニングを行った。その結果、 ART1と相互作用する候補タンパク質が11個得られ、そのうち5つのタンパク質はBBPI(Bowman-Birk Protease Inhibitor)ファミリーに属していた。まず根と地上部において遺伝子の発現を比較したところOsBBPI3(3.1、3.2、3.3)は主に根で発現しておりOsBBPI2(2.1、2.2)は主に地上部で発現していた。ART1とのタンパク質相互作用を確認するためにプルダウンアッセイを行ったところ根で発現しているOsBBPI3タンパク質はいずれもART1との相互作用が確認された。次にアルミニウムによる発現応答について比較したところ、いずれの遺伝子も数倍から十数倍に増加した。一方、ART1による制御は受けていなかった。OsBBPI3の生理学的な機能解析を行うためにCRSPR -Cas9を用いて3重変異体を作出した。3重変異体では野生株に比べアルミニウムに対する根の相対伸長が10%程度有意に阻害されていた。さらにいくつかのART1制御下の遺伝子の発現量は野生株より低下していた。最後にアルミニウム存在下で根の核におけるART1タンパク量を比較したところ、3重破壊株は野生株 に比べART1タンパク量が減少していた。これらの結果からOsBBPI3の機能はART1のタンパク量の維持に関与していると考えられる。 また、イネのアルミニウム感知に関わる分子機構を明らかにするために変異体のスクリーニングを行った。その結果、アルミニウム応答の弱い変異体を複数見つけた。今後はこれらの遺伝子の特定と機能解析が必要である
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