研究課題/領域番号 |
19K15723
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
石田 卓也 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (70759571)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リン動態 / リン酸酸素安定同位体比 / 混合モデル |
研究実績の概要 |
本研究は、土壌における生物利用可能なリンがどのように形成されているか(生物からの放出・有機態・無機態リンの分解)を明らかにするため、リン酸酸素安定同位体比を用いた培養実験系の確立を目指している。本年度は、水田土壌を用いて実験系を確立するための条件設定について検討を行った。 水田土壌は環境保全型農法の一つである冬季湛水を実施した水田と実施していない慣行農法水田の土壌を採取し、実験条件の検討と同時に冬季湛水がリン動態に与える影響を評価した。上記の土壌を用いて27日間の培養実験を行ったところ、培養水におけるリン濃度の時系列変化は16日までで収束し、冬季湛水で低くなるという結果が得られた。この結果は冬季湛水が水田からのリン流出を抑制する効果を持つことを初めて示した研究として学術雑誌に掲載された。また、実験条件として必要な培養日数(30日)や試料量の目安(20 g)などが明らかとなった。また、上記の実験条件を元に、再び30日間の培養実験を行い、画分ごと(生物利用可能・不可)にリン濃度とリン酸酸素安定同位体比値を測定した。リン酸酸素安定同位体比の結果から、酵素を媒介とした有機態リンの分解が生物利用可能リンプールの形成に大きな役割を持っていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、水田土壌と森林土壌を対象に培養実験の条件を検討する予定であった。しかし、水田土壌の培養実験の結果を投稿論文とすることを優先したため、森林土壌を用いて実験条件の検討を終えることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
森林土壌の培養実験系の検討から始めなくてはならないが、水田土壌の実験系を参考にできるため、速やかに検討を終えることができると予想される。同時に検討を終えた水田土壌の培養実験の新たに行い、同位体混合モデルを用いた解析を進めていく予定である。 2020年度から代表者の所属先が異動したため、実験環境の整備から行わなくてはならないが、本実験の核である同位体分析装置は、総合地球環境学研究所の同位体環境学共同研究事業に採択されたため、問題なく利用できる体制ができている。実験環境の整備については、現所属機関から金銭的、人的援助が受けられたため、それら元に整備する予定である。本研究へのエフォートも十分確保できているため、実験環境が整備できしだい、速やかに実験を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験補助のため人件費を計上していたが、別経費での実験補助者を雇用できたため、余剰が生じ次年度使用額が発生した。予算は、当初の計画に加え、申請者の異動先の実験室整備に使用する予定である。
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