研究課題/領域番号 |
19K15729
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
菊川 寛史 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (80758805)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 微生物生産 / Hexadecanoic acid / アトピー性皮膚炎 / 黄色ブドウ球菌 / 乳酸菌 |
研究実績の概要 |
近年、種々の不飽和脂肪酸に様々な微生物生育阻害活性があると報告されている。なかでも、炭素鎖長16(C16)のモノエン酸類に属する不飽和脂肪酸は、アトピー性皮膚炎の重症化を引き起こす黄色ブドウ球菌に抗菌性を示すことが分かってきた。しかし、これら不飽和脂肪酸は天然にはほとんど存在しない希少な脂肪酸であるため、産業的に大量生産できないことが課題となっている。そこで本研究では、特徴的なC16モノエン酸を生産し、かつヒトが食しても安全な微生物の探索を目的とした。 まず予備検討として、自然界及び保有する微生物保存株から希少脂肪酸の生産株を培養して、各菌体内の総脂肪酸を抽出・誘導体化してガスクロマトグラフィー及び質量分析装置に供することで、多様な微生物の総脂肪酸の組成解析を行った。その結果、プロバイオティクスで知られる一部の乳酸菌群に有用性が期待される希少脂肪酸の蓄積を見出した。また、蓄積株において、種々の培養条件・温度・培地組成で蓄積性を評価し、最適条件を確立した。興味深いことに、蓄積株と同属・近縁種の乳酸菌であっても、希少脂肪酸の蓄積の有無が分かれていることを見出した。 現在、突然変異導入によって選抜株における変異株の取得を進めており、乳酸菌株の更なる選抜と高生産変異株の取得を目指している。具体的には、メタンスルホン酸エチル(EMS)による突然変異株の取得とガスクロマトグラフィーによる生産性解析を遂行中である。また、選抜株の近縁種のなかで希少脂肪酸を生産しない株も存在したことから、生産株と非生産株との比較ゲノム解析による希少脂肪酸生産に重要な遺伝子群の特定にも挑戦している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定として、初年度に有用菌株の探索と高生産株の選抜、そして最適培養条件の検討を主としており、おおむね順調に研究が進んでいるものと考えられる。また、更なる高生産化に向けた突然変異株の取得、および生合成メカニズムの解明を目指して、脂肪酸生産の鍵となる酵素・遺伝子の同定に向けた基礎情報が整いはじめており、二年目の研究を促進させるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
現在、進めているとことである突然変異株の取得と高生産化変異株の選抜を行い、希少脂肪酸の生産性向上を目指す。また、希少脂肪酸生産株と非生産株における保有遺伝子の差異を比較ゲノム解析から読み解き、遺伝子工学的手法・脂肪酸生産性評価により生合成メカニズムの解明と生産性の更なる向上の糸口の発見、ひいては、乳酸菌におけるセルファクトリングの実現に向けた試験を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を遂行するにあたり当初購入を予定していた機器を一部、別予算で調達できたため、本助成金の執行額が当初予定よりも減少した。今年度、この額を有効活用し、高額な研究試薬の拡充、あるいは一部人件費の拠出を検討している。
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