研究課題/領域番号 |
19K15731
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
國武 絵美 三重大学, 生物資源学研究科, 助教 (30800586)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Aspergillus / 転写因子 / 相互作用 / セルラーゼ / 糸状菌 |
研究実績の概要 |
前年度の研究により,GFPを融合したClrBはセルラーゼ遺伝子の発現誘導条件であるセロビオース存在下で核に局在することを明らかにした。本年度はこのセロビオース依存的な核移行がセルラーゼ遺伝子発現における抑制炭素源であるグルコースが共存しても起こる現象であることを新たに示し,細胞内局在性はセロビオースによる刺激により制御されることを明らかにした。ClrBの機能ドメインを明らかにするため,C末端側から順次欠損したClrBを作出し,セルラーゼ生産性,細胞内局在性,タンパク質安定性について解析した。その結果,C末端側の68アミノ酸を欠損した変異体で,セルラーゼ生産性が消失し,常に核に局在するようになった。また,野生型ClrBはセロビオースを用いた培養条件で不安定化する傾向にあったが,このC末端欠損変異株ではその傾向が見られなかった。以上より,ClrBのC末端側68アミノ酸が転写活性化機能に重要であり,セロビオースに応答した核移行制御に関与することが明らかとなった。安定性に関してはその意義を含め考察・検討する必要がある。炭素源に応答したClrBの翻訳後修飾を解析するため,セロビオースまたはグルコースを炭素源とした培養条件でウェスタン解析を行ったが,ClrBの分子量に変化は見られなかった。 ClrBは広域転写因子McmAと協調的にセルラーゼ遺伝子プロモーターへ結合することがin vitroの実験により明らかにされている。そこで糸状菌細胞内でのClrBとMcmAの相互作用を解析するため,BiFC法と共免疫沈降法を行った。またYeast two hybrid法によっても両転写因子の相互作用を検証した。その結果,予備的なデータではあるが,BiFC法でClrBとMcmAが核内で相互作用していると思われる結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ClrBの活性制御に関わる領域が同定され,また暫定的ではあるがin vivoにおけるClrBとMcmAの相互作用が確認できたため,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ClrBの機能ドメイン解析を引き続き行う。過去のin vitroの研究により明らかとなっているセルラーゼ遺伝子プロモーター上に存在するcis-elementへのClrBとMcmAの結合を解析し,また両転写因子の相互作用を明らかにする。ClrBとMcmA複合体にさらなる相互作用因子が存在するか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会等がオンラインで開催となったため,出張費が未使用となった。消耗品の購入や出張旅費として使用する予定である。
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