研究課題/領域番号 |
19K15734
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 泰之 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 特命助教 (40733184)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酵母 / バイオセンサ / ドーパミン / シグナル伝達 / Gタンパク質共役型受容体 / レポーター遺伝子 |
研究実績の概要 |
本研究では、微生物での有用物質生産における菌株育種開発スピードを劇的に早めるために、目的代謝物の生産量が高い改変株を高速にスクリーニングできる技術を開発する。特定の物質を認識するバイオセンサを酵母に搭載し、さらに人工代謝経路を導入することで、目的物質の生産量に応じて酵母細胞がセンシングを行うシステムを開発する。さらに、バイオセンサの感度調節が可能なシステムを構築することで、様々なライブラリの中から有用物質高生産株をスクリーニングするためのシステムを開発することを研究目的とした。 令和元年度は、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)を利用して目的物質であるドーパミンのバイオセンサを構築し、ドーパミンの濃度に応じて酵母細胞がセンシングを行うシステムの開発を行った。GPCRの一種であるヒト由来ドーパミン受容体を酵母の細胞膜上に発現させることで酵母内在性のシグナル伝達経路と共役してドーパミンの結合を感知できるレポーター発現系を構築することを試みた。ドーパミン受容体には5種類のサブタイプが存在するため、その中から酵母細胞で機能的に発現するものを探索した。その結果、機能的に発現する受容体に関してはドーパミン濃度に依存したレポーター発現強度の違いを示すことを確認した。さらに、機能的に発現することが確認された受容体において、遺伝子の塩基配列を出芽酵母にコドン最適化することでON/OFF比の向上に成功した。 また、ドーパミンを生産する酵母株を構築するために既報のドーパミン生合成代謝経路を導入した。酵母はグルコースからシキミ酸経路を経由してチロシンまでの生合成が可能であるので他の生物由来の2酵素を導入することにより、ドーパミン生産株を構築した。今後、作出した酵母株によりドーパミンを発酵生産させ、生産能を評価するとともに、蛍光レポーターによるバイオセンサの応答性も確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の研究計画通りに、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)を利用して目的物質であるドーパミンのバイオセンサを構築し、ドーパミンの濃度に応じて酵母細胞がセンシングを行うシステムの開発に成功した。ドーパミン受容体は5種類のサブタイプが存在するが、その中から酵母細胞で機能的に発現するものを見出した。また、既報のドーパミン生合成代謝経路を導入することにより、ドーパミンを生産する酵母株を構築した。これらのことから、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、作出した酵母株によりドーパミンを発酵生産させ、生産能を評価するとともに、蛍光レポーターによるバイオセンサの応答性も確認する。さらに、ドーパミン高生産株をスクリーニングするためには、バイオセンサの測定可能濃度域が調節可能なシステムの構築が必要である。そこで、バイオセンサの感度調節を可能にするために、受容体の発現量や活性を改変することでドーパミン濃度の検出感度を人為的に調節可能であることを示す。さらに、開発したスクリーニングシステムによりドーパミン高生産株のスクリーニングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
直接経費の支出において、端数の金額が生じた。 次年度の直接経費(物品費)として使用予定である。
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