研究実績の概要 |
石油系炭化水素の生分解能を有する、高度に選抜された土壌細菌群集を対象としたメタゲノム解析により、群集中で石油生分解を”先導”すると考えられる「パイオニア細菌」の特定を前年度に達成した。 このパイオニア細菌は、芳香族炭化水素分解性Spingobium属とアルカン系炭化水素分解性Pseudomonas属から成り、それらに加え、4属の細菌がこのパイオニア細菌に依存しながら優占的に生育していることを明らかにした(Mori & Kanaly, Appl. Environ. Microbiol., 2021)。 芳香属分解性Sphingobium属について、群集中から単離株を獲得し(KK22株)、同株の多環芳香属炭化水素(PAHs)生分解経路に関する詳細な解析(Maeda et al., Int. Biodet. Biodegr., 2020)、およびショートリード・ロングリードハイブリッドシーケンス法を用いた完全ゲノムの解読を行なった(Mori & Kanaly, Microbiol. Resour. Announc., 2021)。その結果、同株は多様なPAHsの生分解を可能とする機能性遺伝子群をそのプラスミド上に有していることを明らかにした。 さらに、アルカン系炭化水素分解性Pseudomonas属についても、群集中から単離株を獲得し(KK6株)、同株によるアルキル芳香属炭化水素の生分解機構について解析を行なった(Tomiyama et al., accepted)。 これらの成果により、群集中で石油生分解を”先導”するパイオニア細菌であるSphingobium属とPseudomonas属について、その生理的特徴および生態系における役割について、より知見を深めた。
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