研究課題/領域番号 |
19K15741
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
青野 陸 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (80777938)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 可逆的脱炭酸酵素 / 芳香族ジカルボン酸 |
研究実績の概要 |
現在化石資源の燃焼により生じる二酸化炭素が問題となっており、排出される二酸化炭素量の削減が試みられている。その中で逆反応である炭酸固定により芳香族カルボン酸を合成可能な可逆的脱炭酸酵素が注目されている。一方、既知の酵素はいずれもモノカルボン酸を基質とする。本研究では、汎用的な化成品の原料として期待される芳香族ジカルボン酸に対する可逆的脱炭酸酵素を取得・利用することで、新規芳香族ジカルボン酸合成システムの開発を目指し、本年度は以下に示す研究を行った。 1. 4-ヒドロキシイソフタル酸に対する可逆的脱炭酸酵素の生化学的解析 これまでに土壌からのスクリーニングにより、4-ヒドロキシイソフタル酸 (4HIPA) に対し可逆的脱炭酸活性を示すCystobasidium slooffiae HTK3を取得し、当該活性を示す可逆的4HIPA脱炭酸酵素 (4HIDC) の取得に成功している。そこで本新規酵素について、至適反応pH, 温度および熱安定性などの詳細な生化学的特性を明らかにした。現在生化学的諸性質についてさらなるデータ取得を進めるとともに、論文執筆の準備を進めている。 2. フランジカルボン酸に対する可逆的脱炭酸酵素の探索 フランジカルボン酸 (FDCA) は、PETに代わると期待されるポリエチレンフラノエートの原料である。炭酸固定によるFDCAの合成を目指し、土壌からのスクリーニングを行った。その結果、当該活性を示すParaburkholderia fungorum KK1の取得に成功した。ゲノム解析株の遺伝子情報を基に当該活性を示す遺伝子を取得し、大腸菌において組換え型タンパク質 (FDDC) を調製できた。本発現大腸菌を用いて活性を評価したところ、FDCAに加えて、ピロールジカルボン酸も炭酸固定により合成可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、4HIPAに対して可逆的脱炭酸活性を示す新規酵素4HIDCについて、生化学的解析を行い、様々な生化学的諸性質の解明を行った。またFDCAに対して可逆的脱炭酸活性を示すParaburkholderia fungorum KK1を土壌からのスクリーニングにより取得し、その組換え型タンパク質がFDCAのみならず、ピロールジカルボン酸も合成可能であることを見出した。まだ必要なデータの取得や成果報告については次年度の課題となるが、上記成果を踏まえて、本年度はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに引き続き、汎用的な化成品の原料として期待される芳香族ジカルボン酸に対する可逆的脱炭酸酵素の解析を進め、新規芳香族ジカルボン酸合成システムの開発を目指し、研究を行う。 1. 4-ヒドロキシイソフタル酸に対する可逆的脱炭酸酵素の生化学的解析 前年度までに、4-ヒドロキシイソフタル酸 (4HIPA) に対し可逆的脱炭酸活性を示すCystobasidium slooffiae HTK3、および当該活性を示す可逆的4HIPA脱炭酸酵素 (4HIDC) を取得し、至適反応pH, 温度および熱安定性などの詳細な生化学的特性を明らかにした。本年度は速度論的解析など、未解明な生化学的諸性質についてさらなるデータ取得を行うとともに、その芳香族ジカルボン酸合成能を評価し、合成システムの開発を検討する。 2. フランジカルボン酸に対する可逆的脱炭酸酵素の探索 前年度までに、炭酸固定によるフランジカルボン酸 (FDCA) 合成活性を示すParaburkholderia fungorum KK1、および当該活性を示す可逆的脱炭酸酵素FDDCの取得に成功した。本年度はFDCA合成能に対する炭酸源であるKHCO3濃度の影響などの諸性質を解析し、FDCA合成法の確立に向けた検討を行う。
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