研究課題/領域番号 |
19K15743
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
秋田 紘長 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (10738024)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 貧栄養耐性細菌 / 新亜種提唱 / Paenibacillus / 大腸菌 / ピルビン酸 / D-アミノ酸 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、自然界から採取した種々の環境土壌を対象に、貧栄養耐性細菌のスクリーニングを実施しました。単離した各株について、系統学的解析や生化学的解析、ゲノムシーケンス解析等をそれぞれ進めた結果、単離株の1種が新亜種細菌として提唱可能でした。そこで、Paenibacillus glycanilyticus subsp. hiroshimensis subsp.として、新亜種提唱しました。 一方、各単離株の遺伝子操作ができなかったため、ピルビン酸高生産大腸菌株を利用したD-アミノ酸生産大腸菌株の作製に切り替えました。既に作製が完了しているピルビン酸高生産大腸菌株を対象とした、遺伝子の相同組換え法を新たに確立しました。本法では、クロラムフェニコール耐性遺伝子とプラスミドの利用により、大腸菌のゲノムDNAに内在する非必須酵素の遺伝子破壊と外来酵素の遺伝子のゲノムDNAへの導入がそれぞれ可能になりました。そこで、本法を利用して、ピルビン酸高生産大腸菌株に内在するD-アミノ酸代謝酵素2種類の遺伝子を破壊しました。これにより、大腸菌体内で合成したD-アミノ酸の分解を回避でき、D-アミノ酸を発酵生産した時の生産量の増大が期待できます。 現在は、ピルビン酸高生産大腸菌株にD-アミノ酸生産能を付与するため、D-アミノ酸合成酵素の選定を進めています。具体的には、組換え大腸菌を利用して4種類のD-アミノ酸合成酵素をそれぞれ調製し、D-アミノ酸合成活性を測定しています。D-アミノ酸合成活性が最も高い酵素を選定し、選定した酵素の遺伝子をピルビン酸高生産大腸菌株のゲノムDNAに導入する予定です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究開始当初、カナマイシン耐性遺伝子を利用した遺伝子の相同組換えを計画していましたが、ピルビン酸高生産大腸菌株を対象にした場合、遺伝子の相同組換えができませんでした。そこで、クロラムフェニコール耐性遺伝子を利用した遺伝子の相同組換え法を新たに確立しました。本法を確立するのに時間が必要になったため、当初の計画よりも遅れが生じました。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ピルビン酸高生産大腸菌株のゲノムDNAにD-アミノ酸合成酵素遺伝子を導入し、D-アミノ酸生産大腸菌株を作製します。さらに、D-アミノ酸の発酵生産法を確立します。 まず、酵素活性に基づいて、D-アミノ酸合成酵素を選定します。次に、ピルビン酸高生産大腸菌株内に外来遺伝子発現システムを新たに構築し、D-アミノ酸合成酵素の遺伝子を導入して、D-アミノ酸生産能を付与します。最終的には、作製したD-アミノ酸生産大腸菌株を利用して、D-アミノ酸を発酵生産します。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部、消耗品の納期が間に合わず、次年度に購入することになったため。
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