研究実績の概要 |
2020年度は、基質がP450による修飾を受けて初めて反応を触媒するという厳密な基質特異性をもつチオエステル加水分解酵素ElbBについて結晶学的研究を進めた。昨年度からさらなる結晶化スクリーニングを進めたことで、新しい結晶化条件で従来よりも大きく良質な結晶が得られた。昨年度と今年度に得られた2つの条件で得られた結晶を用いて重原子誘導体結晶を作製し、SAD法による位相決定を試みた。重原子試薬として用いたのは、K2PtCl4, K(Au(CN)2), HgCl2, チメロサール, 5-amino-2,4,6-triiodoisophtalic acidである。しかし、どの結晶でも重原子が入っていることは確認できなかった。次に、今年度得られた質の高い結晶を用いてPhoton Factory BL-1Aの長波長X線によるNative-SAD法を試みた。しかし、このとき用いた数十個の結晶が全て双晶になっており、位相決定が可能なデータを取得できなかった。 糸状菌由来の反復型ポリケタイド合成酵素(PKS)については、大腸菌で可溶性に取得できなかったkPKS以外に複数のPKSのcDNAを共同研究者から頂き、大腸菌発現系の構築に取り組んだ。しかし、大腸菌発現ベクターへのクローニングが難航し、クローニング出来たものも大腸菌での発現は確認できなかった。また、昨年度に可溶性画分に取得できていたモジュール型PKSのDEBS1は、アフィニティーカラム精製でカラムにほとんど吸着せず、精製が進められなかった。このことから、この酵素は可溶性に得られているがフォールディングが適切でなく、アフィニティータグがタンパク質外部に露出していないと思われた。
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