研究課題/領域番号 |
19K15747
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
平林 佳 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 助教 (00778730)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植物ホルモン / X線結晶構造解析 / 構造生物学 |
研究実績の概要 |
アフリカや中東アジアで農業生産に甚大な被害を及ぼす寄生植物は、その宿主となる植物から放出されるストリゴラクトン(SL)を感知して発芽し、寄生している。寄生植物の防除法の中でも、宿主のいない農地で発芽を誘導する薬剤「自殺発芽誘導剤」の開発が強く望まれているが、未だ実現していない。本研究では、SL 受容機構を標的とした自殺発芽誘導剤の開発を目指し、 SL が受容体である KAI2 タンパク質を選択的に制御している構造基盤とシグナル伝達経路の解析に取り組む。SL 活性を選択的に制御する化合物が設計できれば、寄生植物の自殺発芽を効果的に誘導する薬剤の開発だけでなく、ケミカルバイオロジー手法による SL 応答機構の解明にも繋げることができる。今年度は、以下のような成果が得られた。
前年度に構築したリガンド評価系を用いて、引き続き残りの各種ShKAI2について、SLおよびKARの結合を解析し、全てのサンプルのリガンド選択性の評価を完了した。また前年度と同様に、各種ShKAI2と各種リガンドとの複合体について結晶化スクリーニングを行い、大型放射光施設(PF/SPring-8)にて X 線回折データを収集した。いくつかの組み合わせについては、その初期構造の決定に成功しており、現在精密化を進めている。構造決定できていない組み合わせについては、より適切な結晶化条件の探索を進めている。決定した複合体立体構造については、そこからリガンド結合に重要なアミノ酸残基を特定し、それらの部位特異的変異体を発現するプラスミドの構築を行った。これらの変異タンパク質の調製が済み次第、再度リガンド評価系で検証を行う予定である。
以上の成果は、本研究の目的達成に向けた一連の実験の中でも、特に重要なポイントにあたり、今後の実験計画を遂行・達成するにあたり、非常に有意義な結果であるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」の達成のため、本年度の研究実施計画に基づいて実験を遂行した結果、概ね予定通りの成果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は現在のところ概ね順調に進展しているため、今後の推進方策については、今年度の研究成果を踏まえ、次年度以降も、研究計画調書に記載した研究実施計画に沿って実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルスの影響で、研究に必要な物品の供給が遅れたり、物流に障害が多く生じた。特に消耗品(プラスチック製品)の供給などが販売各社で遅れたため、予定通りの研究遂行を実現するために、当初の研究計画の物品とは異なる製品を購入せざるを得ない状況であった。以上のような理由から、当初の研究計画に記した金額から若干の変動が生じ、19,807円を翌年度に繰越す結果となった。この金額は、今年度の予算の1-2%にあたり、大きく予定からずれるものではない。 翌年度についても、繰越し金を加えても大きな変更にはならないため、ほぼ予定通りの物品購入、研究遂行を計画している。
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