アフリカや中東アジアで農業生産に甚大な被害を及ぼす寄生植物は、その宿主となる植物から放出されるストリゴラクトン(SL)を感知して発芽し、寄生している。寄生植物の防除法の中でも、宿主のいない農地で発芽を誘導する薬剤「自殺発芽誘導剤」の開発が強く望まれているが、未だ実現していない。本研究では、SL受容機構を標的とした自殺発芽誘導剤の開発を目指し、SLが受容体であるKAI2タンパク質を選択的に制御している構造基盤とシグナル伝達経路の解析に取り組む。SL活性を選択的に制御する化合物が設計できれば、寄生植物の自殺発芽を効果的に誘導する薬剤の開発だけでなく、ケミカルバイオロジー手法によるSL応答機構の解明にも繋げることができる。今年度は、以下のような成果が得られた。
前年度に決定した複合体立体構造に基づいて、リガンド結合に重要なアミノ酸残基を特定し、それらの部位特異的変異体を調製することに成功した。これらを試料とし、これまでに構築したリガンド評価系を用いた検証実験を実施した。さらに、リガンド選択性の異なるShKAI2間でのアミノ酸残基のスワップを行うため、それらの変異体も各種調製し、同様な評価系を用いてリガンド選択性の変化も解析した。これらの結果から、各種ShKAI2のリガンド選択性の構造基盤の一端を明らかにすることができた。 また並行して、これまでに得られた立体構造に対して、種々の化合物のドッキングシミュレーションも実施した。シミュレーションの結果から候補化合物をいくつか選定し、それらについても構築したリガンド評価系を用いた検証実験を行った。これらの結果から、寄生植物に対する新たな自殺発芽誘導剤の候補化合物を提案した。
以上の通り、今年度は、本研究最大の目的の一つであったSL活性の新たな制御化合物の提案に辿り着くことができた。本成果は、本研究分野の更なる発展に資することが大いに期待できる。
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