研究実績の概要 |
本年度は、ヒトの糖タンパク質糖鎖の生合成および分解に関わる糖転移酵素および糖質加水分解酵素と相同性を有するカイコ由来酵素とその他の糖質関連酵素の構造機能解析を行った。 1. ヒト由来糖転移酵素およびカイコ由来オルソログのC末端側ドメインの大腸菌発現を行い、糖結合能を有することを明らかにした。さらに、X線結晶構造解析によって立体構造の決定にも成功した。 2. O結合型糖鎖の分解に関わる糖質加水分解酵素ファミリー31(GH31)に属する腸球菌由来α-N-アセチルガラクトサミニダーゼの基質認識機構や反応機構を、X線結晶構造解析と量子力学的計算によって明らかにした。本成果の論文は、Biochimieに掲載された。この研究を基に、本酵素に新しい酵素番号(EC 3.2.1.217)が付与された。 3. N結合型糖鎖の分解に関わるGH92に属する腸球菌由来α-1,2-マンノシダーゼの加水分解反応における基質のコンフォメーション変化を、量子力学的計算と基質模倣阻害剤との複合体構造解析によって初めて明らかにした。本成果の論文は、Chemistry - A European Journalに掲載された。 4. GH65およびGH31からそれぞれ基質特異性の厳密なα-1,2-グルコシダーゼおよびα-1,3-グルコシダーゼを発見した。両酵素のX線結晶構造解析およびα-1,3-グルコシダーゼのクライオ電子顕微鏡単粒子解析を行い、それぞれ立体構造と基質特異性の相関を明らかにした。いずれの成果も論文としてJ. Biol. Chem.に発表した。
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