研究課題/領域番号 |
19K15750
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西出 旭 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (80807652)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ユビキチン / エフェクター / 細菌感染 / 抗菌薬 |
研究実績の概要 |
病原細菌が感染時に宿主細胞へ分泌するタンパク質Xは、ユビキチンを付加するユビキチンリガーゼ活性を持ち、宿主タンパク質へユビキチンを修飾し、分解経路へ導くことで、宿主の防御応答を抑え、病原細菌の感染を促進する。これまでにタンパク質Xと結合する化合物のスクリーニングを行い、候補化合物を同定している。 本研究は①化合物によるタンパク質Xに対する阻害活性測定、②タンパク質Xと化合物の相互作用解析、③タンパク質Xと化合物の複合体結晶構造解析を行い、候補化合物を評価および選別を行うことで④化合物を最適化しタンパク質X阻害剤の創出を目指す。タンパク質Xは幅広い病原細菌に保存されており、タンパク質X阻害剤は病原細菌の感染を抑える新規の抗菌薬となることが期待される。 前年度までに、in vitro での阻害活性測定実験を行い、タンパク質Xの活性を阻害する化合物2種類を同定し、①に関しては完了している。本年度は②および③の実験に着手した。②の実験に関して、これまでの実験で in vitro での相互作用解析が困難であると考えられたため、その代替としてタンパク質Xおよびその基質タンパク質を一過的に発現したヒト培養細胞を用いた阻害活性実験を実施した。その結果、同定した2種類の化合物が、細胞内においてタンパク質Xの活性を阻害し基質タンパク質が蓄積していることが認められた。③では、前年度に引き続き、タンパク質X単独および候補化合物複合体の結晶化を行っているが、立体構造の決定に十分な結晶はともに得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト培養細胞を用いた阻害活性測定実験は最終年度に計画していたが、既に実験系を確立することができており一定の進展が認められる。一方、当初の本年度中にタンパク質Xおよび候補化合物との結晶構造を決定し相互作用機構を明らかにする計画であったが、いずれの立体構造の決定にも至らなかった。これらの結果からやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験で、相互作用様式の解明に必要な、タンパク質X単独および候補化合物との複合体の結晶化が困難であることが示唆された。そこで、本年度は他の病原体が持つタンパク質Xのファミリータンパク質を用いて、単独および候補化合物複合体の結晶化を行う計画である。 また当初計画していた、ヒト培養細胞を用いた阻害活性測定実験系はタンパク質Xを一過的に発現することで実験系を確立することができたが、より生体の性質に近いタンパク質Xの安定発現株を樹立し阻害活性実験を行う計画である。
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