研究課題
本年度は、①ライリンの細胞内領域(ライリン250-374)と相互作用するタンパク質の同定、②ライリンの細胞内局在の解明、について主に研究を行った。まず①の研究では、申請者が樹立した細胞株(ドキシサイクリンの暴露によりBioID2-ライリン250-374の発現誘導が可能)を用いた近位依存性ビオチン標識を行った。二次元電気泳動とビオチン化タンパク質の検出により、BioID2-ライリン250-374との相互作用によってビオチン標識されたタンパク質のスポットを複数個見出した。さらに7つのタンパク質スポットに関しては質量分析(MALDI-TOF-MS)による同定を試み、このうち6つを同定することができた。また別の手法としてライリン250-374との相互作用によりビオチン標識されたタンパク質を抽出し、Cyによる標識をしたのち2D-DIGEを行うことでライリン相互作用タンパク質を同定することを試みた。結果として、ライリン250-374との相互作用によりビオチン標識の強度が有意に1.5倍以上になったタンパク質スポットを24個見出した。現在これらのタンパク質の同定を試みている。また別の同定手法としてLC-MSを実施する予定であり、現在この準備を進めている。②の研究では、ライリンおよび各オルガネラを検出する抗体を用いた二重免疫細胞染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡による画像の撮影および画像解析によってライリンの細胞内局在を調べた。その結果、これまで膜受容体として考えられていたライリンがミトコンドリアに多く局在することを見出した。現在ミトコンドリアにおけるライリンの機能について解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
①の研究により、計画書に記載した通りにライリン相互作用タンパク質候補を複数同定することができた。実際にこれらのタンパク質がライリンと直接的に相互作用するのかといった詳細については現在解析を進めているところである。また、他の候補タンパク質をなるべく多く同定するために、LC-MSを用いた実験をすべく準備を進めている。また②の研究により、ミトコンドリアにおけるライリンの局在が示された。①の研究に関しては計画内容に沿った形で遂行されており、加えて②の研究によりライリンに関する新たな知見が得られた。これらのことから、ライリンの機能を明らかにすることを目的とする本研究はおおむね順調に進行していると考える。
LC-MSによりさらに多くのライリン相互作用タンパク質候補を同定する。同定されたタンパク質についてはBioID2-ライリン250-374によってビオチン標識されたということを二次元ウエスタンブロットで確定される。また同定されたタンパク質がライリンと直接的に相互作用するのかを免疫沈降により検討する。siRNAを用いたライリンのノックダウンを行い、ライリンとの相互作用が見出されたタンパク質の機能がどのように影響を受けるか等の検討も行う。ライリンのミトコンドリアへの影響については、siRNAを用いたライリンのノックダウンを行い、ミトコンドリアの形態に影響があるかを検討する。影響が見られた場合には、siRNAでライリンの発現を抑制することでミトコンドリアの形態を制御するタンパク質の発現や活性にどのような影響が現れるかを、ウエスタンブロット、リアルタイムPCR等により解析する。
生じた端数については本年度で調整はせず、次年度における試薬等消耗品類に使用する予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Brain Research
巻: 1719 ページ: 140-147
10.1016/j.brainres.2019.05.034.