研究実績の概要 |
本研究はタンパク質「ライリン」の機能を明らかにすることを目的としている。昨年度の研究により、ライリンがミトコンドリアとその近傍に主局在することが見出された。本年度は、ライリンがミトコンドリアに及ぼす影響について研究を行った。 まず、ライリンをノックダウン(KD)した細胞を用いてミトコンドリアの形態を解析した。その結果、ライリン-KD細胞ではコントロール細胞と比較してミトコンドリアが長いことが観察された。そこで次に、ミトコンドリアの切断あるいは融合に機能することが報告されている複数のタンパク質の量を調べた。その結果、ライリ-KD細胞ではコントロール細胞と比較して、ミトコンドリアの切断に機能するDynamin-related protein 1(DRP1)、およびその活性型(pS616-DRP1)の量が少ないことが明らかになった。次に、DRP1を活性型にするリン酸化酵素であるcyclin-dependent kinase 1(CDK1)とその不活性型(pY15-CDK1)の量を調べた。その結果、ライリン-KD細胞ではコントロール細胞と比較してpY15-CDK1の量が多いことが見出された。これらと同様の結果は、CRISPR-Cas9システムを用いてライリンをノックアウトした細胞株でも見出された。以上の結果から、ライリンはCDK1とDRP1の活性化を介してミトコンドリアの切断を促進することが明らかになった。この結果はBiochemical and Biophysical Research Communicationsに既に掲載されている(Tsutiya et al., 2021)。現在、ライリンがCDK1を活性化する分子機序について、さらに研究を進めている。
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