研究課題/領域番号 |
19K15753
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
角出 啓輔 関西医科大学, 医学部, 特別研究員 (20826458)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒト造血幹細胞 / 胎児肝 / ヒトiPS細胞 / 胎児造血 / 星細胞 / 類洞内皮細胞 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
ヒト造血幹細胞(HSC)は、幅広い疾患に対して移植医療を提供するが、供給は常に不足しており、増幅法開発が望まれてきた。ヒトHSCは、胎児肝臓において最も活発に増殖することから、胎児肝造血環境の解析が重要と考えられたが、倫理的に胎児肝臓を研究対象とすることは難しい。そこで、ヒトiPS細胞より胎児肝臓を構成する各種細胞を誘導し、ヒトHSC増幅環境を構築することを目指して研究を開始した。 まず、既存法を用いて、ヒトiPS細胞(RIKEN-HPS0014-2F)株から胎児型肝細胞(肝芽細胞)を誘導した結果、最大約80%の細胞が、肝芽細胞マーカHNF4a、Albumin、AFPを発現し、胎児肝臓が産生するエリスロポエチン分泌が認められた(iHep)。そこで、ヒト臍帯血HSCをiHepと共培養したところ、胎児造血で特徴的な、盛んな赤血球造血が認められた。一方、共培養後ヒト血球中にHSC増幅を疑う兆候は認められず、他の構成細胞の必要性が示唆された。 そこで、同iPS細胞より、類洞内皮細胞(LSEC)及び星細胞(間質細胞)の誘導を試みた。まず、LSECは既報の方法を全て検討したが、その特性である蛍光標識ヒアルロン酸の蓄積は認められなかった。次いで、星細胞誘導では、特異的因子HGF及びADAMTS13遺伝子を高発現するCD166強陽性CD271陽性細胞の分取に成功したものの、星細胞の特性であるretinol蓄積は検出されなかった。そこで、それぞれの細胞を肝癌細胞株HepG2と2週間共培養したところ、ヒアルロン酸蓄積細胞(iSEC)並びにretinol蓄積細胞(iSt)を得ることに成功した。これらの細胞を、iHep:iSt:iSEC = 1:0.5:0.1の割合で混合してEZsphere dish上に播種したところ、足場物質を使用することなく直径0.2-1.5mmのオルガノイドが形成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は、1) ヒトiPS細胞より胎児肝を構成する各種細胞の誘導並びにヒト造血幹細胞との共培養、及び 2)これらによる肝オルガノイドの作製並びにマウスへの埋設を計画した。 1) 肝芽細胞の誘導並びにヒト造血幹細胞との共培養実験は概ね順調に進行している。しかし、肝星細胞並びに肝類洞内皮細胞の誘導は、既報の方法を全て検討したが十分に誘導可能と評価出来るものではなかった。そこで、新たに各種細胞を分化誘導する方法を検討せざるを得ず、その分、実験期間が延長した。 2) 肝オルガノイドの作製についても、これらの細胞の準備の遅延に伴い、計画がやや遅れている。現在、各種細胞を混合した細胞塊の作製並びに蛍光免疫染色による細胞塊の解析まで完了しているが、内皮細胞による管腔構造を備えたオルガノイドの作製には至っていない。また、重症免疫不全マウスへの移植に関しては、2020年初頭よりSARS-CoV2流行の影響で新規実験が不可能である為に実施出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の成果により、肝芽細胞様細胞、星細胞様細胞及び類洞内皮細胞様細胞の誘導並びに検出方法を確立した。現在、SARS-CoV2流行の影響で、新規動物実験は困難であるため、全ての動物実験を2020年度後期より(状況次第では2021年度以降)の実施に変更する。 本研究には、1) 誘導した各種細胞とヒト臍帯血造血幹細胞(HSC)との共培養によるヒトHSC活性支持の有無及びその期間の評価、2) 人工的に構築したヒト胎児肝様オルガノイドおけるヒトHSCの造血が胎児肝造血に類似するか否かの検討、3) 胎児肝様オルガノイドにおけるヒトHSC活性支持の有無及びその期間の評価が必要である。 そこで、2020年度は、1) の共培養実験を推進するとともに、2),3)について、胎児肝オルガノイドと流路培養モデル等を使用した擬似胎児肝組織の体外的構築を試みる予定である。最終的にヒトHSCの活性評価には、重症免疫不全マウスを用いる動物実験モデルが不可欠である為、その基盤となるヒトHSC並びに肝オルガノイド培養系構築を2020年前期に実施し、動物実験体制が整い次第(2020年度後期以降)、ヒトHSCの活性評価を必須とする実験を順次実施する。
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