前年度までに、当初予定していたUDP-N-アセチルグルコサミンをN-アセチルグルコサミンへと変換するRhodobacter capsulatus由来のsiaA遺伝子の異種発現が致命的な細胞毒性を引き起こす可能性が示唆された。そこで、細胞内で合成した多糖を抽出し、細胞外で機能性オリゴ糖を合成する系を確立するため、当該年度はsll0822遺伝子破壊によるグリコーゲン高蓄積株の作製を行った。Synechocystis sp. PCC6803のtotal DNAをテンプレートにsll0822遺伝子をPCR増幅し、その配列中にエリスロマイシン耐性遺伝子を組み込み、sll0822遺伝子破壊用プラスミドを作製した。このプラスミドを自然形質転換によりSynechocystisに導入し、目的の遺伝子破壊株の作製に成功した。 研究期間全体を通じ、次の3つの成果が得られた。①Synechocystis N-アセチルグルコサミン高蓄積株作製の際の致死毒性の解明、②Synechocystis sll0822破壊株の作製、③ビフィズス菌粗抽出液を用いたラクト-N-ビオースI(LNB)標準品の新規合成法の確立。今後はこれら成果うち②および③を組み合わせ、Synechocystisが合成したグリコーゲンを原料としたLNB合成系の確立を検討する予定である。本研究成果により、シアノバクテリアの糖代謝システムを制御し、細胞外での機能性オリゴ糖の生産可能性を検証することができた。
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