本研究は,コケ植物が生産する【矮雄誘導物質】の単離・構造決定と生合成経路の解明を目的としている。 ヤマトミノゴケは植物の中で唯一,矮雄現象が報告 されている植物であり,この矮化は遺伝的に固定されたものではなく,メス株からの植物ホルモン様物質によって誘発され ると強く示唆されている。 そこで本 研究課題ではその物質の探索を試みることとした。 昨年までと同様に矮雄を数個体単離し,これまで扱ったコケ植物と同様にエタノールや次亜塩素酸等を用いて無菌化を試みた。しか し,無菌化した株の生育が安定する条件を見出すことは変できなかった。さらに個体数を確保するために採集に行く予定だったが,代表者の異動もあり中止せざるえない状況であった。 並行して胞子の採取も行い無菌化,非無菌化条件で発芽する条件を見出し,植物体の生育を見ることが可能となった。しかし,これまでのところ矮雄を再現はでききておらず,さらに時間を要することが判明した。 本現象に類似の植物を矮化させる天然物に関して,その物質を植物に投与すると植物ホルモンやそのシグナル伝達に影響していることが判明した為,矮雄株と通常株における既知の植物ホルモン類の内生量に差異がないか,分析実験を進めた。これまでの研究代表者の構築した手法を駆使することで,いくつかの植物ホルモン類をコケ植物から検出するに至ったが,試験した植物内で大きな差は認められなかった。当該コケ植物を安定して栽培できる条件を見出し,現象に関わる物質を特定したい。
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