食習慣の欧米化による肥満に起因する糖尿病や動脈硬化などの循環器疾患、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)などの生活習慣病の罹患者増加は医療費増大に直結し、我が国においても大きな問題となっている。最近の研究から、酸化ステロールは炎症反応に関与することが示唆されている。本研究では肥満に伴う酸化ステロール増加メカニズムを明らかにし、脂肪組織や全身での慢性炎症との相関を明らかにするとともに、酸化ステロール代謝関連酵素発現調節を介した肥満に伴う炎症を予防・軽減化する機能性食品創製を目指す。本研究課題では、生活習慣病のうちNAFLDに焦点をあて、酸化ステロール代謝酵素が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の発症および進行に与える影響について解明を試みた。 前年度までの解析により、脂肪肝炎誘発食を投与したマウス肝臓において、炎症誘発性酸化ステロールを基質とする代謝酵素が顕著に低下していることを見出した。さらに、肝臓特異的な発現を可能にするアデノ随伴ウイルスベクターを用いた当該遺伝子のレスキュー実験から、脂肪肝炎誘発食投与に伴う肝臓における線維化マーカー遺伝子の発現上昇を抑制することを明らかにした。本年度は、in vivo解析より得られたデータをもとに、酸化ステロール代謝酵素遺伝子発現を低下させる候補因子の絞り込みを行い、培養細胞を用いてそれら候補因子による酸化ステロール代謝酵素遺伝子発現低下のメカニズム解析を行った。これまでの成果をまとめ研究成果を国際誌に投稿した(投稿中)。
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