本研究は、食品成分に含まれる抗酸化作用をもつポリフェノール類による生体内タンパク質の化学修飾に着目し、それら修飾タンパク質と自然抗体との相互作用を明らかにすることで、食による自然免疫活性化機構について探究することを目的とした。まず始めに、ファージディスプレイ法を用いたマウス由来の一本鎖抗体(scFV)提示ライブラリーを構築し、その中から緑茶の成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)によって修飾されたタンパク質と相互作用する一本鎖抗体(scFv)を選び出した。しかし、当初の計画で期待していたほどの多様なscFv配列をえられなかった。そこで、ファージディスプレイ法を用いた15アミノ酸からなるランダムペプチドライブラリーを新たに構築することで、EGCG修飾タンパク質に対して親和性を示す配列の特徴を明らかにすることを試みた。15アミノ酸ペプチドライブラリーの中から選抜したEGCGまたはピセンアタノール修飾タンパク質と相互作用するペプチド配列を解析したところ、いずれもアルギニンの比率が有意に高かった。さらに、緑色蛍光タンパク質(GFP)のカルボキシル末端への15アミノ酸ペプチド融合体を作製し、これらのペプチド配列が直接ポリフェノール修飾タンパク質と相互作用することを確かめた。本結果から、生体内に存在するアルギニンリッチな配列をもつタンパク質の中に、ポリフェノール修飾タンパク質と相互作用するものが存在するのではないかという新たな着想をえた。実際、ヒトのタンパク質データベースから選び出したアルギニンリッチなペプチドが、ポリフェノール修飾タンパク質と相互作用することを実験的に確かめた。以上の結果から、ポリフェノール修飾タンパク質は、当初考えていた自然抗体に加えて、アルギニンリッチ配列をもつ生体内タンパク質とも相互作用することで生体機能を調整している可能性が示唆された。
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