研究実績の概要 |
本研究では,主要なポリフェノール摂取源である飲料において,生体内条件下でのポリフェノール成分の変化と新機能の発現を物質レベルで解明し,食による人のQOL向上を目指すことを目的とした。 ポリフェノールを多く含む飲料のうち,緑茶やハーブ茶を中心とした20種の茶飲料を用いて,生体内想定条件で各含有ポリフェノール(クロロゲン酸,カテキン,テアフラビン,没食子酸等)がどのように変化するか調べた。その結果、上述のポリフェノールは生体内条件を想定したpH 6.8, 7.4, 8.2においてほぼ減少し,酸化物と考えられる高脂溶性ポリフェノールが新たに生成する傾向がみられた。また,同条件下で,糖尿病,高血圧,痛風を含む各種抗生活習慣病の機能はほとんどが低下する傾向がみられた。これら成分と機能性の変化から,茶飲料に見られる主要な機能性は,クロロゲン酸,カテキン及びその他低分子ポリフェノールによるものであることがわかり,低分子ポリフェノールが酸化して生成した酸化物には,元あった機能性はほとんど見られないことが判明した。なお,酸化物として生成した高脂溶性ポリフェノールは元の低分子ポリフェノールには見られなかった独自の機能を示す可能性があり,その機能性は今後も十分検討の余地がある。 これらの結果は,主要なポリフェノール摂取源である飲料に含まれるポリフェノールおよびその機能性が,生体内を想定する中性から弱アルカリ性下において減少することを示唆しており,ポリフェノールによる多様な機能性を得るためには十分に留意する必要があることを示した。
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