研究課題/領域番号 |
19K15772
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
石橋 ちなみ 県立広島大学, 人間文化学部, 助教 (80823418)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 澱粉 / 老化 / ゲル / 結晶 |
研究実績の概要 |
澱粉は,加熱による糊化により食味・食感,消化性の適した状態となった後,冷蔵,保存時に生じる老化によって硬く,消化性の悪い状態となる。老化した澱粉は一般的に好まれないが,老化による硬化や粘着性の減少といった特性を生かした製品もあることから,老化は単に抑制させる現象ではなく,老化によって生じる物性変化を把握し,老化を制御することが必要な現象である。本研究では,老化に影響を及ぼす要因(水分量,保存温度)を踏まえ,老化による物理的な構造形成機構(ゲル構造,結晶構造)と物性変化との関連性を明らかにすることを目的とした。令和元年度は,澱粉の老化時に構築されるゲル構造および結晶構造について,それぞれいつから構造が形成されていくのか検討を行った。 試料は小麦澱粉を用いた。澱粉含量が30%(w/w)になるように澱粉-水混合物を調製し,加熱糊化後,4℃で保存を行った。冷却直後(0時間)および6時間,10時間,1日,3日保存を行った試料について,動的粘弾性測定を行った。応力依存性測定では,保存6時間後からtanδの低下がみられ,その後は保存時間の経過とともに徐々に低下していった。一方,G',G''の線形領域は3日後に狭くなっており,澱粉ゲル中のネットワーク構造の脆弱化が起きていると推察された。温度依存性測定では,保存1日後に昇温に伴うG',G''の低下がみられ,老化澱粉の結晶の融解によるものと考えられた。応力依存性測定や温度依存性測定でみられたG',G''あるいはtanδの変化は,それぞれ異なるタイミングで生じていたことから,老化による澱粉のゲル構造および結晶構造はそれぞれ別々に形成されていくことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,老化に影響を及ぼす要因(水分量,保存温度)を踏まえ,老化による物理的な構造形成機構(結晶構造,ゲル構造)と物性変化との関連性を明らかにすることを目的としている。令和元年度は,澱粉の老化時に構築されるゲル構造および結晶構造について,それぞれいつから構造が形成されていくのか検討を行った。その結果,動的粘弾性測定により保存経過に伴う構造形成の過程を捉えることができたことから,おおむねに進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,当初の予定通り,老化に影響を及ぼす要因の影響を検討することで,実験を展開させていく。水分量,保存温度を変えた試料について,DSC,X線回折測定,動的粘弾性測定,微分干渉顕微鏡観察,テクスチャー測定を行い,令和元年度の結果(澱粉含量30%(w/w),保存温度4℃)と比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では旅費に充てる予定としていたが,新型コロナウイルスの影響により出張が延期になったためである。令和2年度は旅費として使用する予定であるが,感染状況を踏まえ旅費としての使用が困難と考えられる場合は,ガラス器具などの消耗品の購入に充てる予定である。
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