研究課題/領域番号 |
19K15773
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研究機関 | 医療創生大学 |
研究代表者 |
佐藤 陽 医療創生大学, 薬学部, 准教授 (20458235)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ロイヤリシン / 10-HDA / アナフィラキシー / 血小板活性化因子 / PAF / ペプチド / 脂肪酸 |
研究実績の概要 |
血小板活性化因子(PAF)は、アナフィラキシーにおける重要な脂質メディエーターであり、その活性を阻害することで致死的症状(ショック状態や体温低下、血圧低下など)を予防できる。私達はこれまで、ローヤルゼリーに含まれるタンパク質(ロイヤリシン)および脂肪酸に着目して、それら自体や関連する化合物を作製しアナフィラキシーに対する効果を検討した。まず、ロイヤリシンのC末端側11アミノ酸残基をもとに作製したN末端ビオチニル化ペプチド(Biotin-RL-Y11)およびローヤルゼリー特有の脂肪酸である10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10-HDA)はいずれも、アナフィラキシーの発症に深く関与するPAFの活性を劇的かつ用量依存的に抑制することをラットPAF誘発足蹠浮腫モデルを用いて確認した。さらにアナフィラキシーモデルマウスを用いて検討を行った結果、これら化合物はいずれもアナフィラキシーショックにより起こる体温低下を用量依存的かつ有意に抑制することを確認した。 一方、10-HDAや、n-3系脂肪酸の一種であるα-リノレン酸のカルボキシル基をロイヤリシン由来ペプチド(RL-Y11)のN末端アミノ基に結合させた脂肪酸結合ペプチドはいずれも、上記in vivo試験においてPAFの活性を抑制しなかった。以上より、Biotin-RL-Y11や10-HDAによる抗PAF活性や抗アナフィラキシー効果には、ペプチドのN末端に結合したビオチンや、脂肪酸のカルボキシル基が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、in vivo試験において、ローヤルゼリーに含まれるタンパク質(ロイヤリシン)のC末端側の部分ペプチドや、脂肪酸の10-HDAがいずれも抗PAF活性や抗アナフィラキシー作用を有することが明らかになったことから、本研究は現時点ではおおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後(2021年度)は、ローヤルゼリータンパク質のロイヤリシン、脂肪酸の10-HDAの抗アナフィラキシー効果についてさらに詳細に検討を行っていくとともに、そのメカニズムを明らかにしていきたい。さらに、従来よりもさらに高い抗アナフィラキシー活性が期待できるローヤルゼリー由来の別成分やその化合物を見出していくことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はペプチドの作製・合成に関する費用が一度も計上されなかったこと(昨年度に合成したペプチドを用いたため)や、動物実験の回数が少なかったため、次年度使用額が生じてしまった。新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けたこと、大学での自粛活動期間があったことにより、実験時間の短縮、試薬や動物、消耗品等の納期に時間を長く要した、さらに本研究に関しての学会参加等がほとんどオンラインや誌上での開催になったことなどにより出張及び旅費の計上がなかった。次年度(2021年度)は、動物実験のための費用に使用するとともに、従来よりもさらに高い抗アナフィラキシー活性が期待できるローヤルゼリー由来の別成分やその化合物を見出していくことを目指してこれら合成費用に多く充てたいと考えている。さらに、研究成果については積極的に学会発表や論文投稿を目指すため、それらの費用(学会参加費用・英文校正費用など)にも多く充てたい。
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