研究課題/領域番号 |
19K15774
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
深谷 睦 城西大学, 薬学部, 助手 (70611812)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 加糖飲料 / フルクトース / 薬物代謝 / 生活習慣病 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
胎児・乳児期の栄養環境は、エピゲノム制御やメタボリックメモリーとして世代を越えた変化を及ぼし(トランスジェネレーション)、成長後の児の疾病リスクになるとされる。多くの加糖飲料に果糖ぶどう糖液糖などの異性化糖として含まれている「フルクトース」もトランスジェネレーションが懸念される食品成分であることから、加糖飲料の摂取は、生活習慣病リスクを増大させると推測される。これらに加え、エピジェネティックな分子制御機構により腸管の薬物トランポーターや代謝酵素の発現が変動することが考えられ、疾病リスクを増大させるとともに薬効の低下を招く可能性が高い。 そこで、妊娠・授乳期における母親の加糖飲料の習慣的摂取による仔の薬物耐性への影響についてラットを用いて検討することとした。 まず、フルクトースの摂取が薬物代謝関連遺伝子の発現に及ぼす影響について検討した結果、習慣的にフルクトースを摂取していた群では、腸管長の短縮および盲腸内容物の減少、盲腸内容物pHの上昇が認められた。薬物代謝関連遺伝子の発現解析をした結果、回腸において、排泄トランスポーターであるP-糖蛋白質をコードするmdr1(abcb1)遺伝子の発現が上昇した。これらのメカニズムを探るため、メチル化関連遺伝子発現や腸内細菌叢を解析した結果、いくつかの遺伝子発現や腸内細菌組成の変動が認められた。以上より、フルクトースの摂取は、薬物代謝に影響を及ぼす可能性が示唆されたことから、続いて、妊娠・授乳期における母親の加糖飲料の習慣的摂取による仔への影響について検討した。これまでに、母ラットが習慣的に加糖飲料を摂取していた群では、仔ラットの白色脂肪の蓄積や糞便量の減少などフルクトース摂取によるトランスジェネレーションと同様の傾向が認められている。今後は、成長後の仔マウスにおける疾病発症リスクおよび薬物耐性について詳細に検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、計画に準じて、加糖飲料過剰摂取母ラットとその仔ラットを作製した。 4週齢の雌性SDラットに15%の果糖ぶどう糖液糖水を6週間自由摂取させた後、交配妊娠させた。一方の比較対照群には蒸留水を摂取させた。出産後3週間を授乳期とし、離乳後の仔ラットは、果糖ぶどう糖液糖水もしくは蒸留水摂取のそれぞれ2群に分け、9週齢時に解剖し、血液や肝臓、腸管等を中心に必要サンプルを採取した。現在、得られたサンプルを用い、仔マウスにおける血液パラメーターの測定等を順次進めている。 一方、加糖飲料に含まれている成分であるフルクトースの摂取による薬物耐性への影響に関する知見はほとんどないことから、フルクトース過剰摂取ラットを作製し、検討した。4週齢の雌性SDラットに15%フルクトース水を5週間自由摂飲させた。9週齢時に腸管を摘出し、薬物代謝関連遺伝子およびメチル化関連遺伝子のmRNA発現解析、さらに、これら遺伝子の制御をすると推測されるmicroRNA(miRNA)の発現解析をした。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、当初の計画通り、母ラットの加糖飲料摂取による仔ラットにおける薬物耐性への影響について検討する予定である。これまでに、フルクトースの習慣的な摂取が薬物耐性を誘導すると示唆されたため、同様に母ラットの加糖飲料摂取は、成長後の仔ラットの薬物耐性を誘導する可能性が極めて高いと考えられる。そこで、仔ラットの腸管における薬物排泄トランスポーター・薬物代謝酵素の発現解析や体内動態に及ぼす影響を検討する。 その後は、仔ラットにおける疾病発症および薬物耐性出現メカニズムの検討として、エピジェネティクスの視点から、DNAメチル化解析やヒストン修飾について解析を進める予定である。
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