人工のトランス脂肪酸はどのようにして、構造が類似する天然の飽和脂肪酸とは異なるメカニズムで細胞機能を障害するのかを明らかにすることを目的とした。これまでに明らかにしてきた細胞膜のリン脂質組成とインスリンシグナルの鍵分子であるAktへのエライジン酸(人工のトランス脂肪酸)の影響に着目したところ、エライジン酸が結合したリン脂質の出現と、それに引き続く特定のリン脂質分子種の量の減少によって、細胞膜のAktの量が増えにくくなることが示唆された。また、上記のリン脂質分子種の量の変化に関わる可能性がある遺伝子の発現レベルの変化も見出され、トランス脂肪酸が引き起こす細胞機能障害の機序の一端が明らかとなった。
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