研究実績の概要 |
世界的な肥満人口の増加と共に非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が急増している。しかし、その予防法や病態悪化の予測技術は未発達である。本研究では、NAFLDの予防や悪化の予測におけるアミノ酸の有用性を明らかにしようと試みている。 本年度は、① アミノ酸改変食により誘導されるNASHモデルマウスについての経時的な病態解析と、② メタボローム解析を用いたアミノ酸を含む代謝物レベルの測定を実施した。①については、メチオニン低減コリン欠乏高脂肪食(CDAHFD)によって誘導されるNASHモデルマウスについて、肝線維化に先行して生じる表現型の変化を生化学・分子生物学・組織化学的手法によって経時的に解析した。CDAHFD給餌1週目から肝臓への顕著な中性脂質蓄積とCD68陽性マクロファージの集積が観察され、NASH関連マクロファージマーカーTrem2, Gpnmb, 線維化マーカーActa2, Col1a1, Col3a1、線維化制御因子Tgf-beta, Ctgf, BambiのmRNA発現レベルが増加した。一方、CDAHFD給餌4週目から肝ハイドロキシプロリン含量が増加し、8週目からコラーゲン線維沈着が組織学的に認められた。以上のことから、アミノ酸改変によるNASHモデルでは、実際の線維化発症よりもかなり早期に、脂質蓄積に起因する炎症応答や、線維化を誘導するシグナル経路の活性化が生じることが明らかとなった。また②について、①のNASHモデルマウスを解析することで、一部を除く標準アミノ酸の血中濃度がCDAHFD給餌1週目で一過性に上昇することが示された。以上の結果をふまえ、今後はNAFLD発症早期に観察されるアミノ酸代謝の変化と、線維形成メカニズムの関係に着目して検討を進める予定である。
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