研究課題
世界的な肥満人口の増加と共に非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が急増している。しかし、その予防法や病態悪化の予測技術は未発達である。本研究では、NAFLDの予防や悪化の予測におけるアミノ酸の有用性を明らかにしようと試みた。今年度は、前年度に確立したLC/MS/MSによるワイドターゲット代謝物定量に加えて、GC/MSノンターゲットメタボローム解析、RNA-seqといった網羅的アプローチを組み合わせることで、アミノ酸改変食(CDAHFD)によって誘導されるNASHモデルマウスについて、病態形成を反映する代謝物および代謝経路の探索を実施した。RNA-seqの結果から、CDAHFD給餌4週目で観察される肝線維化に先行して、CDAHFD給餌1週目から細胞外マトリクスの再構築や炎症応答などに関わる経路が活性化することが示された。ノンターゲットメタボローム解析の結果から、炭水化物代謝や一部のアミノ酸代謝がCDAHFD給餌の影響を受けることが明らかとなった。特に、ペントースリン酸経路がCDAHFD給餌後に活性化した。ターゲット代謝物定量の結果から、CDAHFD給餌後にS-adenosylmethionine (SAM), グルタチオンなどのメチオニン代謝に関連する代謝物が顕著に変動することが明らかとなった。本研究では、NASHモデルマウスの経時的な病態変化の解析を通じて、アミノ酸の一つであるメチオニンとその関連代謝物の代謝変化を追跡することで、線維形成を予測できる可能性があることをはじめて明らかにした。また、ペントースリン酸経路などの炭水化物代謝が肝線維化と関わる可能性を見出した。これらの成果は、NASHの基盤病態に対する理解を深めるのみならず、肝臓におけるアミノ酸や炭水化物などの栄養素の代謝と疾患の関係を繋ぐ重要な知見となる。以上の研究成果は、学術論文として投稿中である。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 85 ページ: 421-429
10.1093/bbb/zbaa038.
Scientific Reports
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