研究課題/領域番号 |
19K15777
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
岩崎 雄介 星薬科大学, 薬学部, 講師 (10409360)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 食品成分 / 相互作用 |
研究実績の概要 |
抗酸化物質として有名な食品中ポリフェノールは金属イオンとの相互作用によって、活性酸素種(ROS)を産生することが明らかとなっている。一方、小腸に存在し、腸内細菌に大きな影響を受けるパイエル板は、免疫系を介して生体の恒常性に寄与していることが注目されている。腸管は生体外とみなすことができるため、常に摂取する食品成分、特にポリフェノールとの相互作用によって慢性的に生じた ROS やそれによって生じた新規化合物が、腸内細菌やパイエル板に影響を及ぼし、生体の恒常性に変化を与えることが考えられる。本研究では、食品成分の相互作用に注目し、相互作用によって生じた成分の効果や腸内細菌、腸管器質を介した生体の恒常性に与える影響をROS の視点から明らかにする。 相互作用を引き起こす可能性が高い食品成分の組合せを検証するために、さまざまなポリフェノール(ヒドロキシケイ皮酸類)と金属イオンをそれぞれ人工腸液または胃液中で反応させ、高速液体クロマトグラフィー/紫外吸光光度法(LC/UV)で測定を行った。その結果、ヒドロキシ基ケイ皮酸類のカフェイン酸、シナピン酸が鉄イオンや銅イオンと相互作用を引き起こし、LC/UV で新規成分由来のピークを確認した。この新規化合物が生体内におけるバイオマーカーになりうる可能性があるため、新規成分を合成し、核磁気共鳴法によって構造を明らかにした。 DPPH法による抗酸化評価を行ったところ、相互作用によって生じた新規成分は通常のポリフェノールと比較して抗酸化作用の強さが増加していた。このことからも、新規成分は既存の抗酸化物質とは異なった作用を示す可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、相互作用を引き起こす可能性が高い食品成分の組合せを選定するために、さまざまなポリフェノール(ヒドロキシケイ皮酸類)と金属イオンを採用し、反応した混合物をLC/UVでスクリーニング的に測定した。その結果、ヒドロキシ基ケイ皮酸類のカフェイン酸、シナピン酸が、鉄イオンや銅イオンと相互作用を引き起こしたことで、新しい成分が産生されたことをLC/UVによって確認した。新しい成分の合成と単離精製に時間がかかってしまったが、主成分の構造を決定することができ、抗酸化作用という一つの作用について評価することができた。この新しい化合物は、当該ポリフェノールを摂取した際に生じるROSを間接的に証明する手段として利用することができる。
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今後の研究の推進方策 |
ポリフェノールと金属イオンの特定の組合せによって、新しい化合物が生成されることが示されたため、これら化合物を選定し実験動物へと進める。そのために、ポリフェノールと金属イオンの濃度によっては、混餌させた試料を実験動物が摂餌しない可能性があるため、体重などの個体変化および組織重量ならびにメタボロミクス解析の測定値を比較しながら、投与量と期間を検討する。一方、選定したポリフェノールについては、胃酸酸性条件や抱合などの生理的条件下によって成分が変化せず、腸管内に到達していることをLC/UVなどの測定で確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品を購入するにも僅かに金額が足りなかったため。 試薬、溶媒の購入で使用する予定。
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