抗酸化物質として有名な食品中ポリフェノールと金属イオンとの相互作用によって、引き起こされる可能性について、活性酸素種(ROS)に注目した検証を行った。相互作用を引き起こす可能性が高い食品成分の組合せを検証するために、電子スピン共鳴装置(ESR)を用いたプロオキシダント作用の評価を実施した。また、さまざまなポリフェノール(ヒドロキシケイ皮酸類)と金属イオン(またはミネラル成分)をそれぞれ人工腸液または胃液中で反応させ、高速液体クロマトグラフ/フォトダイオードアレイ検出器(LC/PDA)で測定を行った。その結果、カテキン類においては、銅イオンと反応することでROSが多く産生された。一方、カフェイン酸、シナピン酸は銅イオンと反応することで、新たな化合物が生成されることが明らかとなった。新規生成物については、核磁気共鳴スペクトル法によって構造を決定し、その抗酸化作用とプロオキシダント作用を評価したところ、抗酸化作用が増強したことによってプロオキシダント作用が減弱した。一方、エピガロカテキンガレート(EGCG)と金属イオンの相互作用によって生じる生体影響を評価するために、ガスクロマトグラフ/タンデム質量分析計(GC/MS/MS)を用いたメタボロミクス解析を実施した。その結果、本条件下では生体低分子化合物に対して、相互作用に伴う影響は少ないと考えられたが、長期間による摂取や他の成分への影響など評価していく必要がある考えられる。
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