研究実績の概要 |
ポリメトキシフラボノイドは複数のフェノール性水酸基(-OH)がメトキシ基(-OCH3)に置換されたフラボノイドである。ポリメトキシフラボノイドは様々な生理活性が報告されており、シークヮーサーなどに含まれるノビレチン(3', 4', 5, 6, 7, 8-Heptamethoxyflavone)は、フラボン骨格のA環の5, 6, 7, 8位およびB環の3', 4'位に合計6つのメトキシ基を持つ化合物であり、抗炎症、抗肥満、抗皮膚老化、記憶障害改善、体内時計調節、抗アレルギーなど多様な生理活性が報告されている。ノビレチンに代表されるポリメトキシフラボノイドは他のフラボノイドと比較して体内吸収に優れていることが明らかとなっている。しかし、ポリメトキシフラボノイドの物性、溶解性、安定性、小腸上皮膜透過性、組織における代謝や滞留、生理作用の発現に至る作用機構に関しては不明な点が多い。そこで本研究では分子構造の違いによる体内動態と生理活性を調べることで、機能性食品開発に応用できる知見を得ることを目指す。まず、天然由来植物よりポリメトキシフラボノイドを単離・精製または購入することにより50種類のポリメトキシフラボノイドを収集した。次に、各ポリメトキシフラボノイドの疎水性を示すLogP値をACD/Labs Softwareを用いて算出した。さらに、腸管上皮様に分化させたCaco-2細胞にポリメトキシフラボノイドを添加した後の管腔側と基底膜側の化合物濃度の経時変化をHPLCで定量して吸収動態を評価した。その結果、メトキシ基の分布がA環とB環のメトキシ基の数が同じであり、さらにC環の3位、A環の7位とB環の3’位、4’位にメトキシ基を持つ構造は吸収がよいことが分かった。しかし、B環の2’位にメトキシ基が付くと吸収が悪くなる傾向が示唆された。現在、吸収動態とLogP値との相関解析を進めている。
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