研究課題
平成30年の「国民健康・栄養調査」の結果によると、糖尿病が強く疑われる者の割合は男性18.7%、女性9.3%であり、この10年間でみると、男女とも有意な増減はみられず、年齢階級別にみると、年齢が高い層でその割合が高いことが報告されている。高血糖および糖尿病を防ぐには血糖値を正常に制御することが重要である。血糖値のコントロールは、抹消組織である筋肉や脂肪組織に糖を取り込ませることで行っている。そこで、本研究では、筋肉を肥大させることとグルコースを筋肉内に取り込むことの関係性について解明し、新たな血糖値を調節する機構の解明を目的としている。具体的には、培養細胞を用いて、筋肉の肥大を促進させる食品因子を見出し、その作用機序を明らかにする。また、グルコースの取り込み促進についても検討を行う。さらには、実験動物を用いて、有効性の確認を行う。平成31年度は、マウス筋管細胞C2C12を用いて、筋肉の肥大を促進する食品因子の探索を行った。その結果、複数の緑豆ペプチドを筋肥大のシグナルであるAkt/mTOR/p70S6Kを活性化させる食品因子として見出した。これらのペプチドは、ラット筋管細胞L6において、グルコース取り込みを誘導することも明らかにしている。今後は、効果のあったペプチドから分子プローブを作成し、標的分子を明らかにする。標的分子を解析することで、筋肉の肥大およびグルコース取り込みの関連性を検証する。また、実験動物を用いての検証も行う予定である。
3: やや遅れている
平成31年度は、上記の結果の通り、緑豆由来のペプチドが筋肥大およびグルコース取り込みの促進効果を有することを見出した。しかしながら、標的分子の同定および作用機序の解明までには至らなかった。また、実験動物での検証も不十分であることから、当初の計画よりはやや遅れていると判断した。
緑豆由来のペプチドが筋肥大およびグルコース取り込みの促進効果を有することを見出したことから、標的分子探索のためのプローブを調製する。このプローブを用いて標的分子を明らかにする。実験動物を用いて、活性物質の有効性と体内動態を明らかにする。
今年度に実施予定であった実験動物を用いての研究を実施しなかったため、次年度使用額が生じた。この実験動物を用いた研究を次年度に行う。このため、次年度使用額を物品費として計上し、実験動物の購入費などに充てる予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
Archives of Biochemistry and Biophysics
巻: 686 ページ: 108329~108329
10.1016/j.abb.2020.108329
Food & Function
巻: 10 ページ: 5188~5202
10.1039/c9fo01008d