令和元年の「国民健康・栄養調査」の結果によると、糖尿病が強く疑われる者の割合は男性19.7%、女性10.8%であり、この10年間でみると、男女とも有意な増減はみられず、年齢階級別にみると、年齢が高い層でその割合が高いことが報告されている。高血糖および糖尿病を防ぐには血糖値を正常に制御することが重要である。血糖値のコントロールは、抹消組織である筋肉や脂肪組織に糖を取り込ませることで行っている。そこで、本研究では、筋肉を肥大させることとグルコースを筋肉内に取り込むことの関係性について解明し、新たな血糖値を調節する機構の解明を目的としている。平成31年度は、C2C12筋幹細胞においてAkt/mTOR/p70S6Kを活性化させることで筋肥大を促進する3種の緑豆ペプチドを見出した。これら緑豆ペプチドは、L6筋幹細胞において糖取り込みを促進させることも見出している。令和2年度は、緑豆ペプチドのL6筋幹細胞における糖取り込み促進機序を標的分子に着目し解明する。緑豆ペプチドは、GLUT4の細胞膜移行、インスリン経路、AMPK経路ならびにJAK2/STAT3経路の活性化を誘導した。複数の経路のリン酸化が観察されたことから、それぞれの阻害剤を用いて、経路の活性化と糖取り込みの関連性について検討したところ、活性化の減少傾向が観察された。緑豆ペプチドの分子プローブを調製し、標的分子の同定を試みた結果、緑豆ペプチドとレプチンレセプターが結合することを見出した。レプチンは、糖の取り込み促進活性を有している。本研究で見出した緑豆ペプチドは、L6筋幹細胞において、レプチン様作用を有することが示唆された。
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