自然免疫系は感染予防などの生体の初期防御に関わる機構であるが、近年様々な組織における役割も報告されており、従来知られている機能以外にも多様な機能を有することが予想される。このような自然免疫の作用を明らかにすることは、免疫系の新たな意義や重要性を明らかにすることにつながる。本申請では、自然免疫系の分泌分子であるMFG-E8などに着目し、これらが骨格筋融合などに及ぼす作用について明らかにすることを目的に研究を進めた。 これまでに、MFG-E8はマウス骨格筋細胞より分泌されており、分化時に筋細胞の表面に高い割合で結合することを明らかにした。これはアポトーシス細胞がマクロファージに認識され、貪食される過程における細胞間の接着と類似の機序であると考えられ、筋細胞同士の効率的な接着、融合を促進していると考えられる。筋細胞同士が融合する筋融合には様々な因子や受容体が関与することが報告されるが、MFG-E8もその一つであり、免疫系の因子が骨格筋特有の用途で利用されていることが示唆された。またマクロファージが筋細胞融合に伴う炎症抑制に作用することについても明らかにした。 さらに、MFG-E8が骨格筋以外においても未知の機能を担っている可能性についても検討するべく、腸管に着目した。腸管においてMFG-E8が分泌されており、炎症抑制などに寄与することが報告されているが、生活習慣病など食が関与する疾患に着目し、疾患による腸管における自然免疫系分子分泌量などの変化やの関わりについても検討を進めた。
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