研究課題/領域番号 |
19K15786
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 崇 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (90771676)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨格筋 / サルコペニア / 栄養枯渇 / 絶食 / 筋萎縮 |
研究実績の概要 |
本研究では加齢に伴う筋量低下の一端を担う「低栄養による骨格筋萎縮」に焦点を絞り、その分子基盤解明を目指している。これまでに、マウスに対して絶食負荷した際に骨格筋におけるmRNA発現量が大きく変動するE3 ubiquitin ligaseを複数見出しており、その発現制御メカニズムと骨格筋における機能に関して研究を進めている。 本研究で着目しているE3 ubiquitin ligaseのいくつかは、2-デオキシグルコース処理によりグルコース代謝を阻害することでその発現が変化することを培養細胞レベルで既に見出している。そこで今年度は、エネルギー代謝を阻害する試薬を複数種用い、絶食や糖代謝阻害による遺伝子発現変動の分子メカニズム解明を試みた。現時点では詳細なメカニズムを解明するには至っていないものの、糖代謝中間産物が重要な役割を担うことを示唆するデータが得られている。 上記の実験と並行し、プルダウンアッセイと質量分析を実施することで、本研究で着目しているE3 ubiquitin ligaseのユビキチン化基質探索を行った。その結果複数のタンパク質が基質候補として提示され、そのうちいくつかのタンパク質は実際に当該E3 ubiquitin ligaseと相互作用することがimmunoblottingで確認された。基質候補タンパク質の中にはグルコーストランスポーターとの関連が指摘されているタンパク質も含まれており、低栄養時の筋萎縮だけでなくエネルギー代謝を制御する新たな経路の発見に繋がる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は絶食により発現変動するE3 ubiquitin ligaseの機能解析を中心に研究を進め、ユビキチン化基質同定に繋がる重要なデータを得ることができた。また発現制御機構解析に関しても、興味深いデータがそろいつつある。したがって本研究は、期待通りの進度であると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で明らかになったユビキチン化基質候補タンパク質が実際にユビキチン化修飾を受けるかどうかを明らかにする。同時にユビキチン化されるアミノ酸残基を同定し、そのアミノ酸残基への変異導入実験などを通して生理的意義を明らかにする。 絶食時の遺伝子発現制御機構に関しては、培養骨格筋細胞を用いた糖代謝関連遺伝子のノックダウン実験などにより解明を目指す。転写制御の分子メカニズムを明らかにすることで、機能性食品成分を用いた筋機能制御の新たな可能性を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画の一部に遅延が生じ、翌年度以降に延期したため次年度使用額が生じた。 使用計画に大きな変更はなく、延期した実験を翌年度に実施する予定である。
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