本研究では加齢に伴う筋量低下の一端を担う「低栄養による骨格筋萎縮」に焦点を絞り、その分子基盤解明を目指している。これまでに、マウスに対して絶食負荷した際に骨格筋におけるmRNA発現量が大きく変動するE3 Ubiquitin Ligaseを複数見出しており、その発現制御メカニズムと骨格筋における機能に関して研究を進めている。 今年度は特に、絶食に伴い劇的に発現量が低下するE3 Ubiquitin Ligase、RNF122の機能に関して詳細な検討を行った。昨年度までに、プルダウンアッセイと質量分析を組み合わせたRNF122のユビキチン化基質探索を実施しており、その結果いくつかのタンパク質がRNF122の基質候補として選抜された。そこでこれらのタンパク質が実際にRNF122と相互作用するかを共免疫沈降法により確認したところ、いくつかのタンパク質が実際にRNF122と結合することが示された。またこれらのタンパク質の一部はRNF122によりユビキチン化されていることを示唆するデータも得られている。一般に、ポリユビキチン化されたタンパク質はプロテアソーム系により分解されることが知られているが、これらのタンパク質はユビキチン化された後もプロテアソーム系による分解を受けていないことが確認されている。したがってこれらのユビキチン化修飾は、ユビキチン-プロテアソーム系とは異なる何らかの仕組みでタンパク質の機能を制御していると予想される。 今回発見されたRNF122の基質候補タンパク質はいずれも骨格筋における機能が未知のタンパク質であり、低栄養時の筋萎縮だけでなくエネルギー代謝を制御する新たな経路の発見に繋がる可能性がある。
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