本研究は、線虫を用いて自家蛍光を指標にAGE量の変化を非侵襲的に計測可能な方法を確立し、食品因子のAGE抑制効果を検証することを目的として進めてきた。その結果、①加齢した線虫タンパク抽出物において特定の蛍光波長ピークが認められ、本蛍光波長はAGE由来であることが示唆された。そして、その蛍光波長ピークを、②線虫を生かしたまま蛍光測定できる手法の開発に取り組んだ。さらに③糖を含む培地にて線虫を飼育すると、本蛍光波長強度が高まり糖化物質を検出していることが示唆された。そこで④線虫体内のどのようなタンパク質が糖化し蛍光を発しているのか明らかにするため、プロテオミクスを実施したところ、加齢に伴ってビテロゲニンの検出が顕著であった。そこで⑤ウェスタンブロッティング法を用いて線虫タンパク抽出物中の最終糖化産物(AGE)の検出を試みたところ、ビテロゲニンのAGE化が促進されていた。以上より、加齢に伴いAGE由来の蛍光値が上昇し、その蛍光値の一部はビテロゲニンのAGE化の関与が示唆された。そこで上記で開発した個体蛍光測定法を用いて、⑥蛍光抑制可能な食品成分の探索を実施し、乳酸菌の一種Lactococcus cremoris subsp. cremorisを与えた線虫の蛍光を抑制することを見出した。2022年度は⑥を実施した。 本研究を通じて、簡便に生体内のAGEを間接的に検出できることが示唆された。今後、本手法を用いることで生体内のAGEを抑制する食品成分などの探索や開発に貢献できることが期待できる。
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