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2019 年度 実施状況報告書

河内晩柑果皮に含まれるシネフリンの抗炎症効果と作用機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K15790
研究機関愛媛大学

研究代表者

石田 萌子  愛媛大学, 農学研究科, 特定研究員 (20800634)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード河内晩柑 / シネフリン / RAW264.7細胞 / SIRS / 炎症性サイトカイン
研究実績の概要

本研究では、河内晩柑果皮水溶性抽出物およびその活性物質の一つであるシネフリンの生体内外における抗炎症効果とその作用機構の解明を目的としている。本年度は、培養細胞における抗炎症効果と作用機構の解明および全身性炎症反応症候群(SIRS)モデルマウスに対する症状緩和効果について検討を行い、下記に示す成果を得た。
これまでに、河内晩柑果皮水溶性抽出物およびシネフリンは、RAW264.7細胞のLPS誘導性炎症性サイトカイン産生を有意に抑制することが明らかになっている。そこで、炎症性サイトカインの遺伝子発現量に及ぼす影響をリアルタイムRT-PCR法を用いて検討した。その結果、河内晩柑果皮水溶性抽出物およびシネフリンによって、TNF-αのmRNA発現には影響は認められなかったものの、IL-6のmRNA発現は有意に抑制された。これらのことから、IL-6に関しては遺伝子の転写活性を下方制御することでその産生を抑制することが示唆された。作用機構については、マクロファージ活性化に関与するMAPK経路およびNF-κB経路に及ぼす影響をウェスタンブロッティング法により評価した。その結果、河内晩柑果皮水溶性抽出物およびシネフリンは、MAPKファミリーであるp38のリン酸化およびNF-κBの核内移行を下方制御することで、過剰炎症状態マクロファージからの炎症性サイトカイン産生を抑制することが示唆された。
LPSによりSIRSを誘導したモデルマウスに、河内晩柑果皮水溶性抽出物およびシネフリンを経口投与し、生体内での抗炎症効果を検討した。その結果、コントロール群と比較して血中の炎症性サイトカイン量の減少およびマウス生存率の向上が認められ、全身性炎症によって誘導される炎症性サイトカインの過剰産生を抑制し、SIRSモデルマウスの生存率を向上させることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定どおり、本年度は河内晩柑果皮水溶性抽出物およびシネフリンの培養細胞に対する抗炎症効果とその作用機構についての検討を重点的に行った。その結果、河内晩柑果皮水溶性抽出物およびシネフリンによる抗炎症効果には、MAPKファミリーであるp38のリン酸化およびNF-κBの核内移行の抑制が関与することを明らかにした。しかし、河内晩柑果皮水溶性抽出物およびシネフリンがどのようにシグナル分子の活性化に影響を与えているのかについては解明できていない。細胞表面上の受容体に対する作用も視野に入れ、種々のアンタゴニストを用いることで作用点を明らかにする準備を進めている。また、培養細胞実験と並行して、次年度予定していたSIRSモデルマウスに対する抗炎症効果について先に実施し、河内晩柑果皮水溶性抽出物およびシネフリンは生体内においても抗炎症効果を示すことが示唆された。次年度では、河内晩柑果皮水溶性抽出物およびシネフリンの生体内での標的細胞および作用機構の解明に取り組む予定としている。上記の理由により、おおむね順調に進展しているとの判断をした。

今後の研究の推進方策

2019年度に引き続いて、培養細胞における作用機構について検討を行い、河内晩柑果皮水溶性抽出物およびシネフリンがどのようにシグナル分子の活性化に影響を与えているのか解明する。生体内における抗炎症効果については、SIRSモデルマウスに加えて、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎モデルマウスを用いて、河内晩柑果皮水溶性抽出物およびシネフリンの抗炎症効果を明らかにする。各種炎症性疾患モデルマウスに、河内晩柑果皮水溶性抽出物およびシネフリンを経口投与し、臓器での局所的な炎症や免疫細胞のポピュレーションに対する影響を評価することで標的細胞および作用機構を明らかにする。また、シネフリンの機能性を基にした柑橘果皮の活用において、シネフリンの代謝性や安全性について詳細に検討する必要がある。経口投与したマウスの血中や種々の臓器におけるシネフリンの動態についても検討する予定である。さらに、河内晩柑果皮水溶性抽出物に含まれるシネフリン以外の活性物質の同定にも取り組み、シネフリンとの相互作用について検討したいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
サイトカイン測定キットやRNA解析用試薬が当初の予定より安価に購入することができたため。また、研究を効率的に推進することができたため、試薬の購入回数を減らすことができた。
(使用計画)
次年度では、動物実験を主体として検討を行うため、多額の出費が考えられる。繰越額は、実験動物や飼料、床敷きなどに加えて病理解析用試薬の購入費に充てる予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Anti-inflammatory effect of aqueous extract from Kawachi-bankan (Citrus maxima) peel in vitro and in vivo2019

    • 著者名/発表者名
      Ishida M., Takekuni C., Nishi K., Sugahara T.
    • 雑誌名

      Cytotechnology

      巻: 71 ページ: 797~807

    • DOI

      10.1007/s10616-019-00323-4

    • 査読あり
  • [学会発表] Anti-inflammatory effect of p-synephrine in vitro and in vivo2019

    • 著者名/発表者名
      Ishida M., Takekuni C., Nishi K., Sugahara T.
    • 学会等名
      International Conference of Food Safety and Health 2019 (FSAH2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] 柑橘成分の抗炎症効果に関する研究2019

    • 著者名/発表者名
      石田萌子, 竹國千尋, 西甲介, 菅原卓也
    • 学会等名
      日本動物細胞工学会2019年度大会
  • [学会発表] 石田萌子, 菅原卓也2019

    • 著者名/発表者名
      柑橘成分の抗炎症効果とその分子メカニズム
    • 学会等名
      第62回(令和元年度)果汁技術研究発表会
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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