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2020 年度 実施状況報告書

マルチX線CT解析とシミュレーション技術の融合による青果物の物性値マッピング

研究課題

研究課題/領域番号 19K15791
研究機関九州大学

研究代表者

田中 良奈  九州大学, 農学研究院, 助教 (80817263)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード青果物 / X線CT / シミュレーション
研究実績の概要

本研究の目的は、空間分解能および観察視野の異なる2つのX線CT装置で取得した画像情報から、これまで不可能であった青果物内部の諸物性値分布を直接計測可能とすることである。微細スケールで取得したCT画像情報と諸物性値を関連付け、これを個体レベル画像情報に反映、互いのスケール間で情報を生かし合うことにより、ノーマル分解能X線CT画像から空隙率や熱伝導率、水分等の果実内分布を個体レベルで、リアルタイムに同時推定できるようになる。この目的を達成するマルチスケール解析のフレームワーク作りを行っている。
本研究は、(1)マルチスケールX線CT観察画像の取得、(2)マルチスライス画像からの3次元微細構造モデル再構築、(3)微細構造モデルシミュレーションによる局所物性値の推算とCT値との関連付け、(4)青果物内部の物性値分布の可視化の4つの中課題で構成され、これらの中課題のうち(1)~(3)を行った。(1)では、分解能の異なる2種類のX線CT装置を用いて、カキおよびナシ果実の①細胞組織および②果実全体スケールで連続スライス画像を取得し、部位ごと、貯蔵期間ごとの構造特性を明らかにした。続いて(2)では、マルチスライス画像をスライス厚さ方向に積み重ねてつなぎ合わせ、3次元立体構造モデルを再構築した。また、画像解析により空隙率を抽出し、CT値との関係を明らかにした。その後、解析条件を与え、ソルバー(COMSOL Multiphysics 5.3)を用いて熱移動解析およびガス移動解析を行った(3)。細胞組織は不均質な構造を持つため、計算領域を均質と仮定した材料についても解析を行い、不均質材料で得た計算結果と比較し、微小領域平均の物性値として求め、空隙率などの構造的特徴量と各物性値との関係を明らかにするとともに、CT値と空隙率、空隙率と熱伝導率およびガス拡散係数との関係を定量した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、(1)マルチスケールX線CT観察画像の取得、(2)マルチスライス画像からの3次元微細構造モデル再構築、(3)微細構造モデルシミュレーションによる局所物性値の推算とCT値との関連付け、(4)青果物内部の物性値分布の可視化の4つの中課題で構成される。これらの中課題のうち、2年目は中課題(3)まで行うことを計画しており、次の通り順調に進展している。
まず、(1)では、分解能の異なる2種類のX線CT装置(高分解能μX線CT SKYSCAN1172、ノーマル分解能X線CT Latheta LCT-100)を用いて、カキおよびナシの①細胞組織および②果実全体スケールで連続スライス画像を取得し、貯蔵期間ごとに果肉や種子および種子周辺、子房等の部位ごとの構造変化を明らかにした。
次に(2)では、スライス画像をスライス厚さ方向に積み重ねてつなぎ合わせ、3次元立体構造モデルを再構築した。スムーズな物理表面を形成するため、構造の再構築には3D可視化解析ソフトウェアAmiraのフィルターおよびサーフェイス作成機能を使い、シミュレーションのための計算領域を実際の構造に基づき再現するとともに、画像解析により空隙率を算出し、CT値と空隙率の関係を明らかにした。さらに、Brailsfordモデルを用いて空隙率から熱伝導率を算出し、実験的に計測することが難しい微小領域での局所的な物性値を推算することを可能とした。
(3)では、モデルに解析条件を与え、ソルバー(COMSOL Multiphysics 5.3)を用いて熱・ガス移動解析を行った。細胞組織は不均質な構造を持つため、計算領域を均質と仮定した材料についても解析を行い、不均質材料で得た計算結果と比較し、微小領域平均の物性値として求め、空隙率などの構造的特徴量と各物性値との関係を明らかにするとともに、CT値と熱伝導率、ガス拡散係数との関係を定量した。

今後の研究の推進方策

2021年度は、引き続き(1)マルチスケールX線CT観察画像の取得、(2)マルチスライス画像からの3次元微細構造モデル再構築、(3)微細構造モデルシミュレーションによる局所物性値の推算とCT値との関連付けの研究を遂行しつつ、中課題(4)青果物内部の物性値分布の可視化について研究を開始する。青果物内部の物性値分布の可視化では、異なる分解能を持つX線CT装置で撮影したCT画像が相互利用可能である必要がある。これを保障するためには、各々の装置で計測されたCT値の両者間でのキャリブレーションが不可欠である。X線源の強度特性は装置や使用時間によって異なるため、これらの影響をキャンセルできるロバスト性の高いアプリケーションの開発が重要となる。CT値間のキャリブレーションには数種の標準物質を用いて両者を比較するとともに、ターゲットから放射されるX 線スペクトルを近似的に推定する計算式(Tucker et al.、Med. Phys.、1991など)を元に特性パラメータをまとめるとともに、X線スペクトル解析によってX線源の経時劣化による強度特性変化にも耐え得る演算法を提案する。これをノーマル分解能X線CT装置の解析部に組み込むことにより、諸物性値分布の3次元リアルタイム可視化を可能とする。

次年度使用額が生じた理由

コロナウイルス感染拡大により、学会参加や大学院生の研究補助が制限されたため、次年度使用となった。引き続き学会参加等は制限されることが予想されることから、学内での実験データの積み上げを積極的に行うこととし、実験装置の充実や機器の利用料に充てる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 青果物内部の3次元構造を用いたガス移動シミュレーションと有効拡散係数の推算2020

    • 著者名/発表者名
      豊田光希
    • 学会等名
      第4回九州農業食料工学会

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公開日: 2021-12-27  

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