研究課題
近年、口や鼻で食品の味・香り物質の受容を担う味覚・嗅覚受容体が、皮膚細胞にも発現することが明らかとなりつつある。本研究では、皮膚線維芽細胞の味覚・嗅覚関連受容体に作用する食品成分について皮膚老化抑制効果を解析し、さらにその分子機構を明らかとすることを目的とする。一、二年目に、皮膚線維芽細胞における味覚・嗅覚関連受容体425種の発現を網羅的に解析し、13種類の受容体についてmRNAが高レベルに発現していることを明らかにした。続いて、それら受容体に対する食品・天然リガンドを、受容体発現細胞を用いて探索し、見出したリガンドを皮膚線維芽細胞に投与して、細胞外マトリクス産生に与える影響を解析することで、皮膚老化抑制効果を評価した。その結果、バラの香気成分であるゲラニオールが、嗅覚受容体の一種OR1A1の活性化を介して、コラーゲン産生を促進させる可能性を得た。本年度は、ゲラニオールによるコラーゲン発現増加の分子機序を明らかにするために、RNAシークエンスとウェスタンブロットを用いた解析を行い、コラーゲン産生の主要な経路であるTGFb/smadシグナル経路が活性化されている可能性を得た。これらの結果は、香り成分が皮膚に発現する嗅覚受容体を介して、コラーゲン産生を促進する可能性を示唆しており、香り成分を活用した機能性食品、化粧品、薬剤等への開発へとつながることが期待される。また本研究では、味覚・嗅覚関連受容体リガンドを探索し、線維芽細胞における皮膚老化抑制効果を検討するが、本年度はin silico解析による受容体リガンドの効率的な探索方法、400種類以上存在する味覚・嗅覚関連受容体の応答評価を効率的に行う技術を開発し、論文として発表した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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