研究課題/領域番号 |
19K15793
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
小牧 裕佳子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (40811617)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハロチロシン / 食品消毒 / 消毒副生成物 |
研究実績の概要 |
食品消毒は食中毒防止に重要な役割を持ち、次亜塩素酸系消毒剤を用いた消毒は世界的に広く行われているが、消毒剤と食品中有機物の反応が非意図的に副産物を生成することが懸念される。本研究では、「食品消毒処理が健康リスクとなりうるのか?」という問いに答えるべく、食品消毒処理により食品内に生成するハロゲン化チロシン類が食品中発がん物質となりうるのか、また、消毒処理を行った野菜および食肉内にどの程度のハロゲン化産物が存在するのかを明らかにすることを目指した。初年度は交付申請書の目的(1)(2)にあたる、ハロゲン化チロシン類の毒性評価、およびハロゲン化産物検出のための抗ハロゲン化チロシン抗体の選定を行った。 クロロチロシン、ジクロロチロシン、ブロモチロシン、ジブロモチロシンを培養細胞に暴露させトリパンブルー色素排除法を用いて細胞生存率を測定したところ、72時間までの暴露で強い細胞毒性は観察されなかった。次に、生細胞が非蛍光青色の酸化還元色素レサズリンを蛍光赤色色素レゾルフィンに変換する能力を利用したalamarBlueを用い、ハロゲン化チロシン類が細胞増殖に及ぼす影響を検討したところ、全てのハロゲン化チロシン類で細胞増殖抑制が観察され、特にジクロロチロシンとジブロモチロシンでその程度が強く観察された。 抗ハロゲン化チロシン抗体の選定のため、抗クロロチロシン抗体、抗ブロモチロシン抗体をそれぞれ購入した。培養細胞に次亜塩素酸、次亜臭素酸を作用し、細胞中に生成したハロゲン化チロシン量をウェスタンブロッティング法で測定した。次亜塩素酸によるクロロ化チロシン生成、次亜臭素酸によるブロモ化チロシン生成ともに、抗クロロチロシン抗体よりも抗ブロモチロシン抗体でより精度よく検出できた。細胞への作用濃度、作用時間、回収方法などのさらなる実験条件検討が必要だと考えられるが、来年度以降につながる結果を得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的(1)(2)の予備実験を達成でき、今後の推進方策の策定ができた。
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今後の研究の推進方策 |
ハロゲン化チロシン類がそれ自身では強い細胞毒性を持たないことが分かった。しかし、今回用いた細胞は皮膚細胞及び肝臓細胞である。細胞は由来となる器官により代謝能が異なり、酵素活性などにも幅がある。次年度は、より食事摂取に近いと考えられる消化器官系の培養細胞を入手し、毒性評価を継続したい。また、食品成分にはエピジェネティックな変化をもたらすもの、代謝酵素の発現を誘導するものなど、組み合わせによっては相乗効果を持つ場合がある。他の食品成分と組み合わせたハロゲン化チロシン類の毒性評価を行っていく予定である。 抗ハロゲン化チロシン抗体については、細胞を対象にした検出とともに、消毒処理した野菜からのタンパク質抽出方法の検討・ハロゲン化チロシン類の検出を進めていく予定である。
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