研究課題/領域番号 |
19K15795
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
山崎 優子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (70518117)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハーブサプリメント製品 / リスク評価 / 薬物代謝酵素 |
研究実績の概要 |
ハーブサプリメントのような成分特性(脂溶性生体異物・複数成分の濃縮物)をもつ健康食品は、素材を利用した製品も入念なリスク評価が必要である。本研究は、健康被害の報告がほとんどない食品添加物の安全性試験の考え方“一日許容摂取量(ADI)=無毒性量(NOAEL)/100(不確実係数)”に基づいたHS製品のリスク評価法(製品対象動物試験)を複数実施してきた。本法は、これまで、肝臓への有害作用(SDIの不適切な設定による過剰摂取・薬物相互作用・環境化学物質の混入)のリスク低減に有効,薬物代謝酵素CYP(Cytochrome P450)を評価指標とすれば、血液検査よりも高感度に、短期間(8日間)で、肝臓への有害作用を検出可能,製品毎の評価が必要,であることを明らかにしてきた。 2021年度は、CYPを誘導した製品について、有害作用の解明に向けた細胞実験に取り組んだ。Butterburの製品評価では、CYPの誘導作用が製品毎で異なっていたため、製品中の成分組成をHPLCやLC-MSで分析した。有効成分petasin類や、近年注目されているS-petasinがCYPの誘導作用に関わる可能性もあり、HepG2を用いた解析を進めた。 Coleus forskohlii製品評価でも、製品毎に差があり、肝肥大を伴い医薬品と関わる肝CYPを誘導した。その有害作用のメカニズム解明に向けて、HepG2を用いて、肝臓脂肪を蓄積する成分を検討して候補成分を特定した。さらに、糖・脂質代謝産物、CYP遺伝子発現等の検証を進めていく。 本法で製品を評価することの有用性とCYPを誘導する成分を特定し、そのメカニズムについて科学的な知見を示すことができれば、より安全な商品設計(成分除去・含量調節)へと貢献できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、業務過多となった。Coleus forskohlii製品中に含まれる脂肪蓄積作用を惹き起こす成分は特定できたが、そのメカニズム解明に向けた糖・脂質代謝産物や脂肪蓄積に関わる遺伝子発現の解析が遅れた。Butterbur製品中に含まれるCYPを誘導する成分も検討中である。また、センシンレン製品を対象とした動物実験に着手できなかったため、遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、肝臓CYPを誘導した製品の成分分析や作用メカニズムの解明にむけた検討を引き続き実施していく。Coleus forskohlii製品中のCYP誘導作用のある成分や肝臓の脂肪蓄積に関与する成分が判明したため、HepG2を用いて、糖代謝や脂肪合成系に関連する遺伝子発現、CYPの誘導作用等を検証する。確証を得た場合には、単独成分を動物に用量を変えて投与し、NOAELの評価を目指す。Butterbur製品に関する評価は、英文論文執筆中であり公表していく。また、これまで肝臓への作用を中心に検討してきたが、本法により、肝肥大だけでなく腎肥大を生じる製品(Butterbur)があった。この腎肥大は雄ラットに特有なα2 microglobulinの蓄積に起因する硝子滴沈着によると推定され、ヒトにはこのタンパク質がないため、ヒへの外挿には重要性が低いとされている。しかし、本法によりラット腎臓への別要因の影響が認められる場合は、ヒトでも同様の作用が生じる可能性がある。実際に腎障害の発症メカニズムに,肝臓CYPの誘導が関与するアリストロキア酸(ウマノスズクサ科含有)の事例がある。本研究では、センシンレンを対象とした動物試験を2021年度に実施予定であったが延期したため、2022年度に実施する。センシンレンは、ラット肝臓CYPを誘導する,有効成分のアンドログラホリドのヒトへの静注により急性腎障害を生じた等の報告がある。肝臓CYPの誘導が腎障害発症の要因となることも推定されるため、本法が腎障害も検出できるかを検証する。腎障害の所見があった場合には、組織学的な検査やCYP誘導との関連性について解析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、業務過多となり、細胞実験が遅れ、動物実験を見合わせたため、未使用額が生じた。 2022年度は、遅れていたColeus forskohlii製品中に含まれる脂肪蓄積作用のある成分のメカニズム解明に向けた細胞実験を進める。また、センシンレン製品の動物試験(肝臓CYP遺伝子発現と腎臓への影響)に取り組み、腎臓への影響があった場合には、組織学的な検査やCYP誘導との関連性について遺伝子解析を実施し、未使用額を使用する予定である。
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