研究課題/領域番号 |
19K15799
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
加藤 完 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (20632946)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 真菌 / プレバイオティクス / フラクトオリゴ糖 |
研究実績の概要 |
腸内細菌は多様な細菌および真菌などの微生物を含む複雑な複合微生物系を構成している。しかし、細菌による解析は多くの報告されている一方で腸内真菌に着目した解析は少なく、宿主-真菌や細菌-真菌などの相互作用のメカニズムについてはあまり明らかになっていない。 昨年度は、マウス糞便中からの真菌の培養、真菌特異的プライマーを使用した菌数測定および次世代シーケンサーによる18S rRNA遺伝子およびITS領域によるPCR条件の検討などを行い、マウス糞便内の細菌/真菌を解析する方法を評価した。 上記の条件を使用して、本年度ではマウスにプレバイオティクスであるフラクトオリゴ糖(FOS)およびガラクトオリゴ糖(GOS)を摂取させ、糞便中IgA量、腸内細菌/真菌の構成及び細菌/真菌の菌数の変動について解析した。短期間での変動を調べるため4時間おき60時間に糞便の採取し、腸内環境の変動を調べた結果、どちらのオリゴ糖の摂取においても糞便中IgA量が大きく増加することが明らかになった。同時に、細菌叢解析を行った結果、既報の内容であるがプレバイオティクスのどちらでもBacteroidaceae科が大きく増加したが、18S rRNA遺伝子およびITS領域プライマーを使用して真菌叢解析を行った結果、ASV(Amplicon sequece variant)を比較したところ、FOSとGOSでは異なるASVが増加することが示された。この結果から、異なるオリゴ糖の摂取により、腸内真菌における変動が確認できた。 現在、短期的なプレバイオティクスの摂取と異なり細菌/真菌叢環境だけでなく宿主への変動を調べるために、プレバイオティクスを一ヶ月間摂取させ、同様に糞便IgA量及び細菌/真菌叢構成が変動を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス糞便中に含まれる真菌は、細菌と含まれて明らかに菌量が少ないため、DNA抽出の検討に多くの時間を費やす必要があった。また、16S rRNA遺伝子によるアンプリコンシーケンスでは、整理された塩基配列が複数の領域でデータベースとして使用されるが、18S rRNA遺伝子及びITS領域による真菌叢解析のパイプラインやデータベースは、明らかに細菌と比較して少ない。これらの検討について、多くの時間がかかってしまった。 また緊急事態宣言下で、長期的なマウス試験を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
上記から報告したように、昨年度に検討した細菌/真菌を評価するためのPCR条件やプライマーおよび解析パイプラインを用いた検討は行った。検討した条件を使い、異なるプレバイオティクスであるFOSおよびGOSをマウスに摂取した際の、真菌-細菌の変動について明らかにした。 今後は長期的なマウス試験で回収した糞便を用いて、短期的試験で得られたFOSとGOSによる異なる真菌の変動を解析していく。加えて、細菌と真菌との相関解析を行い、時系列な変動について明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年の緊急事態宣言下で動物試験自体を実行することができなかった。 そのため、動物実験計画を次年度へ変更し、糞便DNA抽出、次世代シーケンサーなどの必要な消耗品を使用するため「次年度使用額」が生じた。
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