農薬の残留基準は、対象とする食品により農薬本体だけでなく、代謝物等も含めた基準値が設定されている。そこで、本研究では、流通している食品中に残留している農薬本体及びその代謝物等の存在確認を可能とする高感度分析法を確立し、残留基準値設定における科学的根拠となるデータを収集するとともに、その適格性を検証することを目的とした。 令和元年度は、食品から効率良く残留農薬を抽出し、分析を妨害する色素、脂肪などの夾雑物を効果的に除去したのち、感度、選択性に優れ、本体とその代謝物等を同時に定量可能な液体クロマトグラフ/タンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いた一斉分析法を確立した。続けて、愛知県内で流通している食品について残留実態調査を実施した。対象化合物は、農薬本体113種類(アセタミプリド、チアクロプリド、イプロジオン等)、代謝物等22種類(IM-2-1、チアクロプリドアミド等)とし、定量下限値を0.01 ppmに設定した。野菜・果実(32種類100検体)、食肉(3種類20検体)、牛乳(10検体)、玄米(10検体)及び冷凍食品等野菜加工品(21種類39検体)の合計179検体を調査した結果、野菜・果実(25種類55検体)、玄米(2検体)及び冷凍食品等野菜加工品(4種類6検体)の合計63検体から農薬(代謝物等含む)が検出された。食肉、牛乳からは農薬本体、代謝物等ともに検出されなかった。また、定量下限値未満の痕跡レベルでの残留実態及びその規則性を把握するため、痕跡値も含めて積極的にデータを収集したところ、野菜・果実(8種類10検体)、冷凍食品等野菜加工品(4種類7検体)において農薬本体と代謝物等が同時に検出された。これらの調査結果から、食品の種類によって農薬本体と代謝物等の存在割合に特徴的な規則性がある可能性が示唆された。
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