大腸菌を用いた異種タンパク質の生産は,研究室レベルに留まらず産業レベルでも基盤的な技術として利用される。本研究では,研究代表者らが最近見出した「大腸菌のタンパク質翻訳が外来の塩基配列によって促進される現象(TED)」を基にしたタンパク質生産力の強化に関する技術開発とその法則性の解明に取り組む。TEDは,Shine-Dalgarno配列の上流に特定の塩基配列を挿入することで,その下流にある遺伝子配列の翻訳量を増大させる方法である。現在までの検討では,どのような配列が適当か,その背景にどのような法則性があるのかなど,十分な知見が得られておらず,改良の視点に欠くため,実用化も現実的ではない。そこで,本研究によってそれらの点を明らかにする。 本年度は,翻訳促進効果と配列特性の関係について検討するため,これまでのデータで最も効果が高いmlcR遺伝子の3’末端25塩基配列を基にして,PCR法により各種1塩基変異を導入した配列をまず作成した。次に,その変異の影響を評価するために,その変異導入した配列とレポーター遺伝子(GFP)を含むプラスミドを大腸菌に形質転換した。顕微鏡撮影画像を基に発現を評価するため,現在画像処理プログラムを開発中である。 また,各配列の特性をRNA二次構造とそのギブズ自由エネルギーとして評価するために,計算プログラムを導入した。現在,その変異の影響とギブズ自由エネルギーの相関を解析中である。
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