研究実績の概要 |
バレイショの四分子型細胞質雄性不稔性(T-CMS)に関わるミトコンドリア遺伝子を明らかにするために、次世代シーケンサーを用いてSolanum stoloniferum由来の4系統の種間F1雑種(2系統は正常花粉を産出し、残りの2系統はT-CMSを示す)、およびT-CMSを有する品種Alwaraのミトコンドリアゲノム配列を解読し、それらの遺伝子配列の比較を行った。 その結果、アセンブリングの全長は462,716〜535,375 bpとなり各系統2〜7つのミトコンドリアゲノムコンティグ得られた。その中に、リファレンスのミトコンドリアゲノムとは異なる2つの組換え型コンティグ(RC-IおよびRC-II)が同定された。 そのうち、RC-I はrpl5-ψrps14遺伝子がnad6遺伝子に結合し、新しい遺伝子間領域を生成していた。このRC-Iの特異的遺伝子間領域を増幅するPCRマーカー(P-3)を使用してRC-Iの有無を40系統のS. stoloniferumと39系統のF1雑種を用いて調べた結果、この遺伝子間領域は、T-CMSを示す種間雑種とその親のS. stoloniferum系統でのみ出現することを発見した。さらに27のバレイショ野生種からなる129系統を用いてRC-Iの有無を調査した結果、メキシコ原産二倍体野生種のS. verrucosumとメキシコ原産の倍数種でのみRC-Iのバンドが検出された。8系統のS. verrucosumを母親にして得た92の種間雑種の花粉稔性を調査した結果、RC-Iを保有する4系統のS. verrucosumに由来する雑種だけがT-CMSを示した。 以上の結果より、RC-Iは明らかに四分子型細胞質雄性不稔性と関連しており、RC-I特異的遺伝子間領域には、T-CMSの原因因子となる新規遺伝子が含まれている可能性が考えられた。
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